一日能楽師入門体験
④ 着物の違い
ここでは、舞台に出演されるときの着物の違いを紹介いたします。
先生によるファッションショーですね。
その前に、南川さんの浴衣姿を。
横の装束姿の伊地知さんに目が行きそうですが…南川さんの浴衣姿をご覧下さい。
能楽師の方がこのような着流しの浴衣姿で人前に出られることは、まずないそうです。
例えば、誰も居ないご自身だけのお稽古の時などには着用されることもあるそうです。
そして先生の着物姿。
普段能meetsでは着物ですね。
講座、ワークショップ、お稽古の時もこの姿が一番多いそうです。
あとお舞台の申合せ(リハーサル)も着物です。正式な舞台にこのスタイルでは立ちません。
あと、お家によっては申合せから紋付袴という決まりもあるそうです。
ただ、袴を履かない着流しの着物姿も、あまり人前で見せることはないそうです。
先生は以前、道成寺のお稽古中、袴だとどうしても見えにくい足さばきを自分で意識するために、わざと履かなかった、という事はあったそうです。普段から舞台の事を考えている、という事ですね。
移動中も袴に関してはさほど決まりはないようです。
ただ、袴を履く事前提で短い丈の着物にされている方も多く…私もかつて舞台前の紋付の着流し姿を楽屋で拝見して「短かっ!」と感じたことがあるのですが…
決してサイズを間違えたとか、急激に背が伸びたということではないそうです。
そして
舞台のシテ(主役)を務められるときはもちろん装束をつけられます。
こちらは1月に舞われた「石橋」赤獅子
※カメラマン 野口英一さん
こちらは「融」の後シテ 融大臣
※カメラマン 衛藤キヨコさん
シテ方はシテ・ツレなど装束をつけて出演するだけではなく、
他に、前回でも触れた後見・地謡としても舞台に出演します。
その時に着るのが紋付袴。
こちらですね、黒に家紋。
この姿、実はスタッフの中でも人気がある…というと何だかおかしいですが、紋付袴姿はふだん他ではあまり見る機会も少ないので、拝見するとこちらも気持ちが高まります。
この家紋は個人のものであったり(内弟子中はその家の家紋をつけることも)ですが、拘らず、先輩から譲り受けたものを着ておられることもあるそうです。
そして、紋付袴より普段の生活ではまず見ないのが…
こちらの裃(かみしも)。
これは曲の格式や、催しの格式があがったときに着用するそうです。
曲で言えば、道成寺や卒都婆小町。
催しで言えば、独立披露や追善公演。
などですね。
私も何度か拝見したことがありますが、初めて見た時は「時代劇みたい」とビックリしたのを覚えています。
もちろん、後見と地謡、そして囃子方も裃なのですが
もっと格式があがったときは、
地謡以外の後見と囃子方だけ長裃という、袴の裾が長いものを着用されるそうです。
「遠山の金さんのやつですね!」というと
「そうですね」と先生にサラっと流されましたが…
地謡が履く事はないんですか?と聞くと「大変なことになるでしょうね」と先生…そうですね。
出てくる時も帰る時も8人が長袴だったら…皆さまも是非想像ください。
裃の時はやはり
「大事な曲に、催しに参加するという意気込みがうまれますね」と、
仰っていました。大切ですね。
こういった着物は全て、普段からしっかりと保管しておくことが大事だそうです。
折り目正しくという言葉あるように、着物はキッチリ畳んで保管。
肩のラインや、袴など、折り目がしっかりとしていないと、本人やお弟子さんがちゃんとされていないんだと、そういう風に見られてしまう事もあるそうです。
洋服でもありますね、スラックスのセンタープレスやカッターシャツの襟、スカートのプリーツ…学生の時に先生から言われた「服装の乱れは心の乱れ」という言葉を思い返しました。
舞台は楽屋から
そして
能楽師としての資質は普段の生活から
改めて思いました。
もちろん、これは全ての職業に通じる事だと思います。
今回南川さんの一日能楽師入門体験をレポートしながら、自分にも当てはめて色々と勉強になりました。
また是非とも別の企画でやってみたいと思いました。
次は番外編です!
またもや南川さんにお手伝いをお願いして、お稽古の風景をお届けします。