朗読の森〜声から広がる本の世界Vol.3 | この辺りの見所の者

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2024/3/23秋田アトリオン ミニコンサートホール。午後の部 14時開演



SNSをチェックしていたら、秋田の演劇畑の加賀屋 淳氏のXのポストに、朗読の公演の告知があった。午前の部は満席だけど午後の部は若干当日でも大丈夫らしいとあったので、急遽行く事にした。

自分のポカで開演時間を14時を15時開始と勘違いしてしまい、ダメ元でアトリオンへ。案の定、開演してから30分以上経っていて、受付のピアニストのアルゲリッチ似の方に渋い顔で断られた。まあ、予約してないし、遅刻したから仕方ないと帰ろうとしたら、若いスタッフが追いかけて来て、1〜2席は空いているので、朗読が次の方に代わるタイミングで入場出来る事になった。


朗読は全部で七本。四本目の「わかって下さい」藤田宜永  朗読:塩田睦子

から観始める。朗読者と、おそらく場面転換の改行でピアノの劇伴が短く入っていた。

昔のラジオで聴いた事あった因幡晃の、わかって下さい、がキーとなり、かつて結婚の約束をささた男女が、それが叶わず何十年後かに再会する。女性は、盲目になり娘と一緒。結婚出来なかった理由を、男性は初めて知った。セイヤングとかのラジオの時代を思い出す。朗読をナマで聴いたのは初めてだったけど、大人の女性の落ち着いた声のトーンと劇伴のピアノが、わかって下さいのメロディを弾いたりと工夫された朗読公演。


休憩


舌切雀 太宰治   朗読:安倍眞壽美

舌切雀は小さい頃に聞かせてもらった記憶があるけど、朗読で聴いて、結構いろいろ考えさせられる内容だった。大人になってから童話などを聴くと、ドキッとする。


朗読爽の会は七人の朗読者と音楽の方を加えた八人の構成。人生の先輩方の集まりである。一人一人の落ち着いたトーンとテンポは、自分が勝手に思っていた感情を出す朗読のイメージとは違う。テキストの言葉を丁寧に語る事で、聴く人々に伝わるものなんだと目から鱗。テキストの世界観が脳内映像しやすい。途中から入場したけど、あっという間に、朗読の世界に入り込む事ができた。


中野のライオン

新宿のライオン  向田邦子 朗読:髙畑洋子


向田邦子のテキストの見事さ。映像が浮かんで来る。それは朗読の髙畑洋子さんの声のトーンからによるものだろう。聴いていてワクワクした。


ラストは

算盤が恋を語る話 江戸川乱歩

朗読:加賀屋 淳


加賀屋 淳氏は、秋田の演劇畑の方で、幾つかの舞台を観ている。

算盤片手に喪黒福造みたいな格好。抑え目のトーンでサラサラとしたテンポで始まる。演劇のトーンて朗読のトーンは違うなと思いながら観ていたけど、年配のお客さんが殆どでスマホのメール音が鳴ってしまい、そこから、加賀屋淳氏が少し動揺して、声がうわずり噛んでしまったのが惜しい。そこから、力業の演劇のトーンでラストまで駆け抜ける。朗読と言うより一人芝居を観ているように感じた。ただ、江戸川乱歩のテキストの見事さに救われた感。斜め上の展開で乱歩は凄い。



朗読のイメージは、テキストを感情込めて読むものだと思っていたが、淡々と落ち着いたトーンで読んでもテキストの世界観が十分に伝わる。個人的に、向田邦子の中野のライオン新宿のライオンの朗読が良かったな。


また行きたいと思えた。自分より人生の先輩方の演者やお客さんだけど、悪くない。