2024/2/4
旧松倉家住宅内米蔵
松倉ミニシアターvol.3「沼山からの贈り物」
秋田市内にある映像会社でミニシアターも月一で上映してしているアウトクロップ・スタジオ。ドキュメンタリー映画の上映が中心で自分も何回か足を運んだ。
「沼山からの贈り物」はアウトクロップ・スタジオ。の原点。やっと観る事が叶った。
沼山大根とは一時は途絶えた秋田県南部の伝統食。「いぶりがっこ」の大根として栽培されていたとのこと。
「沼山からの贈り物」は途絶えた沼山大根を3人の男が再び甦らせたドキュメンタリー。大学四年生だったアウトクロップ・スタジオ代表の初監督作品。
秋田県の伝統野菜復活の話ではあるけれど、農業に対する見方を優しくえぐってくる。直接の批判は一切無い。だからこそ心に刺さってくる。このスタンスは、アウトクロップ・スタジオが選ぶ映画や自主作品に連ねかれていると感じる。事実を淡々と描く事で、観る側に委ねられているからある意味キツい。向き合いたく無いときも無くはない。
自分の事になるが、湯沢市の実家の畑で野菜作りを始めて、出来るだけ農薬、化成肥料を使わないように野菜を育てた。(野菜の種にも農薬処理しているのが大半。)
ほぼ有機栽培した野菜の味は市販品の野菜と全然違っていた。
今回の上映には、観客全員に沼山大根の糠漬けが配られた。
土崎アパートに帰ってから齧ってみた。硬くてかじるの大変だけど濃厚な味。
劇中に野菜の種には固定種とf-1種(交配種)があり、今はほとんどf-1種。現在農業の実態も描かれており、知らない事だらけだった。何処の業界でも大人の事情がある。
見終わったあと、監督でアウトクロップ・スタジオ代表の栗原エミル氏のトーク。観客との質疑応答も交えたもの。
現在の沼山大根の状況、アウトクロップとは掘り起こすという意味で秋田の宝を掘り起こしたいという気持ちが込められている。
また、固定種マンセーではなくてf-1種とのバランスを取れる事が出来れば良いというスタンス。
正確に言えば、沼山地区で沼山大根は作られていない。種から秋田県内の別地域で三人の農家がそれぞれ沼山大根ベースの大根を作っているというのが正しいだろう。
話が脱線するが、伊勢に住んでたときに伊勢たくあんという食べものがあった。自分も何度が食べた事がある。伊勢たくあんは宮川から朝熊山までの一定の地域しか栽培できないらしい。伝統野菜も土地によるものが大きいのだなと当時は思ったものだ。
復活した沼山大根は完全オリジナルでは無いが、その土地による沼山大根としての味わいがあるのだろう。オリジナル沼山大根と復活沼山大根の味の違いを知りたかったかな。質問しようかと思ったけど、日和った。
復活沼山大根を秋田名物として、大量生産は避けながらも継続していく道を探る農家の方々に敬意を表したい。
アウトクロップ・スタジオには掘り起こすというテーマと、淡々と押し付けない問題提起のドキュメンタリー映画をどんどん上映してもらいたい。考えるのは観客なのだから。事実を知り考えること。初めの一歩はそこからだ。