即興庭園 第1部は凛としたファンタジー、第2部は戯れのカオス | この辺りの見所の者

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8/20日

秋田県潟上市 園福寺



即興庭園と云うものに行った。

ダンサー、ピアニスト、パーカッショニスト、画家、僧侶。どんな感じになるのか想像がつかない。

第1部は14時開演。


お彼岸をテーマにした即興パフォーマンス。障子が開けられる。観客も座っても良し、立って移動しても良し。第1部は子供もいて、パフォーマンス中も客席の畳を縦横無尽に走り回る。空間キャンバスのドローイングのアクセントになっていた。


ピアニストの佐市さんとパーカッショニストの金澤良平さんは文楽の人形の黒子姿みたいだ。



金澤さんのティンシャの透明な音色から始まる。本堂の障子が開けられて天井に吊るされた多数の風鈴が風のなびきに応じて空間キャンバスにドローイングを始める。キーボードのピアノの、やや硬質な音色とフレーズ。あの世からこの世への誘いの音楽の様だ。


開けられた障子から外を見ると表門があり、会場の本堂までの白洲の砂が通路のような感じで、2人のダンサー、加賀市葵さんと渡部悠さんが表門から白洲を伝わって本堂へ。この通路は能楽堂の橋掛かりのように思えたり、あの世からこの世の通路の様にも見える。


本堂の障子が開けられて天井に吊るされいた風鈴が風のなびきに応じて空間キャンバスにドローイングを始める。キーボードのピアノの、やや硬質な音色とフレーズ。アーティストのまつはしまりこさんは、布に絵を描き始め、来場者に配られた木のうちわのデザインは後藤仁さんが手掛けた。


(左が第1部、右が第2部。)


2人のダンサーは音楽に触発されて会場めいいっぱい使いパフォーマンス。客席の子供ともの絡みもあり、あの世から来た精霊のような。二人が去り、僧侶(圓福寺の副住職さん。)が現れて大太鼓の縁打ち。ピアノとパーカッションと縁打ちは静かなグルーヴを巻き起こしていく。僧侶が去り、再びダンサー2人が現れてパフォーマンス。また去ると僧侶がお経を読み始める。黒のヴェールを覆ったダンサー2人が現れた。客席を縦横無尽に踊ったり駆け抜けて行ったり。ラストは再び外に出て白洲の下に消えゆく感じで終わる。


不思議な世界観だった。個人的にシャガールの絵の色彩で、あの世からやってきた精霊2人がこの世で、子供達と戯れて僧侶のお経で成仏したのか、あの世に帰って行く。何処か西洋の黄泉の世界のファンタジー的なもの。


第1部のカーテンコール。



第1部だけ観て帰るつもりだったが、空間ドローイングならば、第2部は違うものになるのではと云う思いで、急遽当日券で行く事にした。


第2部は、第1部と違うものだった。


第1部は14時開演、第2部は17時開演。賑やかだった第1部の客席と違い、落ち着いた雰囲気の第2部。開始直前に外から、何か歌の放送が聴こえてきた。(終了後にピアニストの佐市さんから、あれは潟上市民歌だったとの事。)


第2部は、パーカッションのティンシャから始まるが、キーボードはピアノの音色でなくエレピの音色で変えて来た。柔らかな牧歌的な空間。第1部とガラリと変わっている。障子が開けられ、表門を見つめる。西日が門の外側の田園を照らし、柔らかな情景。ジブリの映画に出てくる田園風景を思い浮かべていた。


日常と非日常の区別がだんだんつかなくなって来た。ダンサーの精霊2人はジブリの妖精のような精霊。より自由に戯れる。ピアノやパーカッションにも積極的にも絡んで行く。ピアニストは途中でピアニカを吹き始め、舞台に出て行く。ピアノも途中、激しい不協和音を奏でる。戯れのカオスと言えば良いだろうか。


観客もカオスに巻き込んで行く。ふと表門を見ると門の陰から少年がひょこっと顔出して見ていたり、軽トラが通過したり、日常と非日常の境界線がわからなくなっていた。第1部は眺めていた感じだが、第2部は空間キャンバスの中に入り込んでいる自分がいた。本当にジブリの農村風景に、いつのまにか自分も立っていた。そんな感覚は初めてかも知れない。精霊も楽器隊も絵描きも自由に思うがままに戯れている。第1部のやや凛とした音楽よりも第2部は、優しく日本の牧歌的で土着性のあるもので、一つのテーマで異なる空間ドローイングを見せてもらえた。


第2部のカーテンコール。後光が差してる様な気がした。単に逆光は野暮かな。