第33話 さらわれて ③ | N/F NO FACTER

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剣と魔法の世界「アスタシア」を舞台にしたファンタジー小説。
謎多き主人公アレルと連れのゼイラ、
その他キャラクターたちの冒険活劇です。
アレルとゼイラ、二人の恋愛要素もあります。

アレルがその扉のあった前に立つと

こんな光景が広がっていた。


ゼイラが、複数の男たちに

縛られた状態で足を広げられている…


そんな想像の中で一番最悪な状況にアレルは一気に頭に血が上った。

この場に居る全員、地下水路、シャハンごと塵として消す!

まだ一度も詠んだことのない恐ろしい

古代魔法の詠唱を始める!

「エタークトロメキエグスヨン」


そこに、シャハンの宦官マルケルが現れた。

「アレル、まぁ、落ち着けよ」


この状況を見て、落ち着けというのか!

アレルはそう怒りの目で訴えると詠唱を続けた。

「ノーマンヘルクテル…」


「これをみたらわかる」

マルケルは慌てて最近覚えたらしい自らの魔法でとある巻物を

アレルの前に提示した。


「他国を占領した際、その土地の王子を

人質として迎えた。その者は一見男だが…」


「女性器も携えていた」


アレルの詠唱がやっと止む。

「ゼイラは両性具有だったんだ」


…何分か沈黙が続く。

ゼイラが、両性具有?つまり…

!?


アレルはそれを知ると、先ほど唱えていた

古代魔法の封じにかかる。

このままでは、この場がとんでもない事になる!

一人で抑えるのは至難の業だ。


そこにジェザがどこからともなくすっと現れた。

ジェザは、傭兵のノッヂや時魔導師ゲンスと同じく

長い時間を生きる人物である。

(第22話では、講演会で大変なテロに遭うが

アレルがそれを解決した。)

ベ=オラ教の宣教師であり、

多忙な講演会の日々を送っているはずだが…


「俺も手伝おう。」

ジェザはアレルのできそこないの暴れまわる魔法を

宇宙空間の彼方に送り込む!

そして、ブラックホールを閉じた。


ルドォン!

遠くでなにやらすごい爆発の音が聞こえた。

「大陸ひとつ、消えるとこだ」ジェザが呟く。

とりあえず、世界の平和は守られた…




そこに先ほどのローレンが現れ

「だからこのやり方には反対したんだけど…」

そう悪びれて云った。


アレルはロープに縛られ猿ぐつわをされ、目隠し、耳栓をされた

ゼイラをほどくために近づく。

「んんん!」

ゼイラはまた襲われるとおもったのか

最大限の抵抗をする。

「ゼイラ…」

アレルは体に何か所も打撲を受けたが

そんなことはほんの小さな事。


漸く苦心してゼイラの目隠しを外す。

「!アレル」

やっとおとなしくなったゼイラの猿ぐつわを外し

続いて耳栓、何重にも巻かれたロープを外す。

「ごめん…」

ゼイラのこの発言にアレルはタガが外れたようで、

涙をぽろぽろ流しながらゼイラをただ、抱きしめた。


ふと、周りの男たちが近くで見ると案外華奢であることに

気付く。ゼイラを抱きしめてしばらく経ってから漸くそのことに

気が回った。


「なんだ、女たち…か…」

アレルのその問いにより、男装していた

女たちは装備を外す。

「ジェザさま、これでよかった?」


「ローレンに、ジェザに、マルケル?」

ゼイラがまだ若干震えつつもその場を

キョロキョロしている。


胸まわりがはだけたゼイラにアレルがそっと

マントをかぶせる。


ゼイラはアレルの泣いているところを

初めて見た。自分のために泣いてくれたのが

何よりうれしい。


そして…


「ちょっと手荒なやり方だったが

お前たちは普通のカップルになれる。

そのことを知ってほしかったんんだ」

ジェザが全く悪びれる様子もなくそう云ってのける。



アレルはゼイラの操が守られていたことを本人にも確かめ、

やっと安堵した。

「だからってひどすぎるだろお…んぅう」

そう文句を云おうとしていたゼイラの口を

アレルの熱いキスがふさいだ。





二人は、周りから祝福の拍手がなるのを

聞きながら、夢中で初めてのキスをした。

とても、熱いキスを。


………

その後二人は無事にルアーガに帰還した。

まずはフォースが「ゼイラ、てめぇびっくりさせるなよ!」

いいながらも顔はすっかり綻んでいる。

「ごめん、てへへ。」

パーティーメンバーは二人を笑顔で迎えた。


まず順を追って説明するが、

ゼイラは両性具有の体にメスを入れられ、結果女になっていた。

そして、アレルに出会い、恋をし、15になりようやく遅めの初潮が来たところだったが

それを病気と勘違いして、フォースに弱音を吐いた。

時同じくしてマルケルはシャハンの先王、ドキナの手記を発見。

数行によって書かれたゼイラの秘密に驚く。

そこに事情を聞いた(盗聴したw)浮かれたジェザが現れ、

ゼイラをフォースの前でいきなりかっさらっていった。

ジェザはあらかじめ手を回し、ローレンの盗賊団の

女たちに男装させ、ゼイラの体を検査させたのだった。

マルケルとローレンの盗賊団を巻き込み、このサプライズ(!?)

を計画した黒幕は、ジェザだ。


「おれ、今回の事はすげぇ怖かったけど結果いつか

アレルの子が産めるかもってわかってほんとジェザには感謝してるんだ。」

それを聞いてアレルは赤くなり

「みんなの前でいうな、ばかやろう」

そう云ってゼイラを小突く。

「いってー」

そうおおげさに痛がるゼイラはアレルの腕に抱きつく。


この状況を複雑な思いで見つめるローラであったが

自分の唯一の強み、女であることがゼイラも同じということが

わかったことで、二人を応援する気持ちが強くなりつつある。

他、行こうか…ローラは眩しそうに二人を見た。


そんなローラの肩に、そっと手を置いたものがいる

「!」

びっくりして見るとそこに居るのはキィルだ。

そういえば、キィルは自分に対していつも優しい。

…それに、結構ハンサムだ。

ローラはキィルににっこりと笑いかけた。もう、未練はない。


この、ゼイラの誘拐にはいろいろな尾ひれがついて

彼らパーティーその他のなかで忘れられない事件となった。


アレルはゼイラに女であることがわかったから

一人称を「おれ」から変えたらと促すものの

「おれはおれ、今更変えるのも変じゃん?」と

すっかり流されてしまった。


そのうち、希望通り…を奪ってやる。

アレルはそう、心の中で誓ったのだ。


第33話 ③ さらわれて 終わり、 第34話に続く…


***


マルケルが調べ、ジェザが画策し、ローレンが協力した

今回の一件ですがようやく大団円を迎えました。

もうすぐ、本当の大団円もやってくる予定ですが


その前にひとつ小休止。


ひとつの山場を越えた気分です。


新しい恋も生まれつつ、物語は佳境へ。

第一章はもうすぐラストへ向かっていきます。


とりあえず、一つの疑問として

シャハンの先王ドキナはなぜゼイラを

宦官にしたのか?という件があります。


ひそかに宦官と偽り傍に置き、後の自分の愉しみのため、という見方ができますが

そこはドキナ王も急逝してしまい、真実はもう闇のなかです…

アレルもそのことに気づいてほっとしているのでは

ないでしょうか。


では、2章のプロットを組みつつ、

そろそろキャラクター紹介も増やしたいところで

次回に続きます。


また近いうちに更新したいです!

お楽しみに。


小砥テイ