ルアーガに残ったゼイラは暇を持て余していた。
フォースはあいかわらずのルアーガ探訪に忙しいし
メイドのルクスは所用に追われ、のんびり会話もできない。
暇なのでやってみたかったレース編みを
見よう見まねでやってみたものの、やはりうまくいかない。
「あーもう!アレル早く帰ってこねーかな!」
ついに爆発したものの、部屋にはひとり、誰もおらず。
これまでもアレルが国をあけることはたびたびあったが
こんなに帰ってくるのが待ちどおしいことがあっただろうか。
とりあえず、寝貯めでもするか…
そう思ってうつらうつらしていると突如窓をたたく音がした。
コンコン
うっすら目を開けたゼイラであったがここはルアーガで一番
高いところにある塔だ
誰も窓から来れるはずがない。
きっと夢なんだ…ゼイラはまた寝ることにきめた。
しばらく寝ようと試みたものの、どうも窓の外で気配がする。
これは本当にだれか訪問しているのかもしれない。
そう気になってくると眠気もどこかに行ってしまった。
コンコン「アレル?」
ノックのあとに聞き覚えのないアレルを呼ぶ声がした。
夢ではない。
ゼイラはあわてて飛び起きると「はーい!」と
威勢よく返事すると窓をそっと開けた。
「わ!」
窓を開けると見たことのないような
透明な甲冑を着た髪の長い男が梁から
逆さづり状態でそこに居た。
「ゼイラか、アレルはどこ?」
「?」
初対面のはずだが、向こうはこちらを知っているらしい。
しげしげと顔を眺めたが見覚えはない。
グレーのさらさらの長髪をまとめもせず
特徴は額にひし形の青い石のついた甲冑飾りを
身に着けているところだろうか。
いろいろ考えたが、やはり見覚えはなかった。
「どこかでお会いしましたか?」
「あ、そうか。」
グレーの髪の彼はとりあえず、といった感じで窓から
身を乗り出して、部屋に入ってきた。
「この姿じゃわからないよな」
「この姿?」
「っま、いいや。とりあえず、君がアレルと出会った時の話が聞きたいんだ。」
「え?」
「アレルから聞こうと思ってきたんだけどぼくは君からでも一向に構わないよ」
そういうと謎の訪問者はアレルがいつも座るソファーに寛いで座った。
まぁ、悪いやつじゃなさそうだし、アレルと出会った話くらいしてもいいかな。
そう思ったゼイラはアレルと出会った頃の話を一部始終した。
アレルと出会ったのは
昔の魔法の痕跡であった、ワープゾーンがきっかけだ。
アレルの執務室のそばのつきあたりに
古くからのワープゾーンがあり、そことつながっているのが
ゼイラの居るシャハンの後宮であった。
ゼイラは幼きシャハンノ王子のメベルの世話係である。
古くは先王、ドキナに仕えていたが、彼の死後、メベルにお仕えしていた。
役割は主に一緒に遊ぶことである。
中身が子供っぽいゼイラであるから、王子と同じ目線で
楽しむことはお茶の子さいさいである。
そして、遊びの最中、王子を立てるように接する。
それが毎日の仕事だった。
王子が勉強を嫌がるので、知っていることでもゼイラが
一緒になって勉強するスタイルをとると、王子も仕方なく応じる。
(ダジャレではない)
そんな中、王子と折っていた折り紙の折鶴が
ある場所に置くとすっと消えるという現象が起きた。
それは、後宮の泉の横なのだが、消える際に謎の紋章が
地面に浮かびあがるのを感じたのだ。
「どこかに通じているのかもしれない。」
ゼイラはその秘密を自分だけのものにしたくて
わくわくした。
試しに、自分の自己紹介をイラストつきで書いた
手紙をその場所に置いてみることにした。
1,2,3…3秒後、手紙は消えた。
やっぱりどこかに通じている!
喜んだゼイラは返事をくるのをわくわくして待った。
その場所の近くに寝るようにする、など、いつ
届いてもいいような態勢を整えて(先輩給仕からはくどくど言われたが)
なにか届くのを待ち構えた。
「きた!」
届いたのは向こうからの自己紹介だった。
名前は現在13の自分より年齢は2つ上。
アレルという名前で、もう仕事をしているという。
「へー…」
だんだんアレルに興味がわいてきて
二人は何通か手紙をやりとりした。
「会ってみたいな…」
そう思ったゼイラだが
子どものころから後宮もろくに出たことがない
ゼイラにとって、ルアーガは遠い彼方であった。
手紙でもうすぐ誕生日だということを伝えたゼイラ。
すると、誕生日にはアレルから花束が贈られてきた。
実はシャハンでは、相手に花を贈るというのは
プロポーズにあたる。
アレルはそのことはしらなかったのだろうか…いや、きっと知っている。
居てもたってもいられなくなったゼイラは後宮を
そっと抜け出し、港に向かった。
むりくり、ルアーガ行きの船を突き止めて入り込む。
無一文での密航だ。
コンテナの中に入り込んでいたのだが、都合よく
水分豊富なイモのコンテナで水分と食糧両方確保できた。
なんとか1週間ほどでルアーガに辿りついた。
だが、密航を咎められて追われるが、ゼイラには天性の
運動能力がある。素早い動きで猿のように木から木へとわたり、
あっという間にルアーガの兵をまいた。
ようやく念願のルアーガにたどり着いたものの、
アレルが住んでいるのは塔の上、というだけでまるでヒントがない。
とりあえず、王都へ向かおう。
港から、丸二日。草鞋がぼろぼろになり、はだしでなお歩いた…
アレルの住む、塔を目指して。
ピーチュクリーチュル
雲雀が自分と同じく、海から王都を目指して飛んだ。
第7話① 終わり、②に続く。
***
アレルとゼイラの馴れ初めのお話。
これを第一話にという案もあったのですが
結果的にこういう流れになりました。
訪問者は名前も名乗らず、謎ですが
そのうち本人が正体を語るでしょう。
まだ、物語のはじまりは続きます。

らくがきより。もう出てきてたり、まだだったり。