古代人というのは、理由はさまざまだが
特殊な魔法や呪いなどにより寿命が長くなり、
この世に生を受けてから約1万年ほど生きている人物たちのことだ。
それぞれと会って交流を持つことで
情報、歴史、文化等なにか得られるものがあるのでは?
ルアーガの王、セトナからの助言であった。
アレルは、諜報員の二人を世に放ち、情報を探らせていた。
3人はそれぞれ
①傭兵のノッヂ
②時魔法使いのゲンス
③僧侶のジェザ
だと云われており、いずれもアスタシアの歴史に古くから跳躍した
人物ばかりである。
諜報員からの情報が入り、ノッヂの滞在国を見つけたとのこと。
アレルたちは一路、ノッヂの居るアデフに向かった。
アデフというのはルアーガの北北西に位置し、占い師サザンの居る
リンガイアより手前のルアーガに近い国だ。
古代から暗殺部隊が暗躍しており、他国から恐れられている。
ノッヂはそこで、傭兵として国から莫大な予算をもぎとり
活躍していたという。
戦争の相手は、ライナノーツェであったが、
1話で触れたタンジハルとウィンシャンの先の平和調停に伴い、
こちらも一度和平が成立し、停戦状態だ。
働く必要がなくなったノッヂは毎夜酒場で酔いつぶれているらしい。
こんなに足跡を残しあっさり見つかる古代人も珍しい。
堂々たるものだ…逃げも隠れもしないということか。
「ここがノッヂが居るっていう酒場か。」
宿に荷物を置いてやってきた3人であったが
ゼイラはしげしげと酒場の外観を眺めた。
「さすが都会、えらいデカい酒場だな」
フォースも口にした。
「入ってみよう。」
アレルが酒場の扉に手をかける。
「出ていきやがれ!」
入り口に入ろうとしたところ
傭兵らしきガタイがいい男があわわと
飛び出てきて、ぶつかった。
「すまん、急ぐので」
少しアレルと肩が触れた。
そこにエールの大ジョッキが飛んできた。
「わ!」寸前で避けたアレルとゼイラ。
フォースもジョッキは避けたのだが、
ジョッキから毀れたエールが
もろに肩にかかってしまった。
「うげ!」
「災難だな、フォース…」
「すまねーな、おめーらに当てるつもりはなかったんだが」
そう言って頭を下げた男…が偶然にも問題のノッヂであった。
オレンジの赤毛のゼイラと色は近いが
血のように濃い赤の髪。
と右目を眼帯で隠したいわくありげな容姿。
露出狂のようなふんどし一丁の姿。
その素肌には意味ありげな薄紫色のタトゥーが体全体に彫られている。
諜報員の進言した外見の特徴と一致する。
「おれ、とりあえず宿に戻っとくわ」
エールまみれのフォースはそう言うと扉に向かった。
「すまんな」
ノッヂがコインを投げてフォースはそれを受け取る。
「金貨じゃん、ラッキー♪」
ノッヂは金回りがいいのか、大判振る舞いである。
フォースはるんるんで宿に帰って行った。
「あなたと話がしたいのだが、よろしいか?」
アレルがノッヂに訊ねた。
「俺でよければ。」
そう応えたノッヂとアレルはなにやら会話を始めた。
だんだん酒の量も増え、深酔状態の二人。
ゼイラはアデフ特有のスパイシーな食事と
ノンアルコールのヨーグルトミルクとの相性を楽しみながら、
どうやら二人の会話の言語が
移り変わっていくのをあっけにとられて眺めていた。
さいごは、ノッヂがアレルにしがみつき泣きながら頭を
撫でられるという謎の事態が起きていた。
ゼイラはそれを見ながらうつらうつらと眠りに落ちた。
窓からのまぶしい朝日にゼイラが目を覚ますと
自分の肩に布がかけられているのに気付いた。
アレルのマントだ。
すっかり酔いつぶれて、たのみのふんどしさえ脱げかけの
酒場のテーブルの上で大の字で寝ているノッヂと
同じく酔いつぶれたアレルが肘をたて器用な態勢で寝ているのを
確認するとふぁーとあくびをして、もう一眠りしたのであった。
結局酔いつぶれただけか?
そう聞いてきた一人宿屋でぬくぬくと過ごしたフォースであったが
アレルはノッヂの宝物庫の一つを自由に使うことを許されたと
交渉はちゃんと行ったことを報告した。
「見返りにはなにかするのか?」
「俺と朝まで付き合ってくれた礼だってさ。」
アレルが言うには、ノッヂは酔いが進むごとに
言葉が過去の言語に遡っていく習性があり、
話を合わせるのがとかく大変だったとの事。
それにつきあってくれたのは生きてきてアレルが初めてだと
最終的に古代エレメンタル語で感涙していたという。
さらに、古代エスタロス帝国語に進んだときは
さすがにどうしようとアレルも思ったらしい。
(Yes,Noにあたる言葉ほか、単語で乗り切ったという。)
「さすが、長生きだけあって相当金を貯めこんでいるんだな」
ノッヂとの交渉により、かなりの個人資産を増やしたアレル。
今後の資金源が国に頼らずとも確立された。
それだけでも有意義な旅であった。
「さて、諜報員によると、二人目のゲンスも所在がわかったらしい」
「よっし行くか」
「その前に宿でゆっくりさせてくれないか?」
アレルは、飲みすぎによる単純な二日酔いで苦しんでいた。
「まるで接待、大人って大変だ」
ゼイラはにひひっとわらった。
ピョー、キョアーと宿の隣を流れる川付近で
甲高くササゴイが鳴く声が
二日酔いのアレルの頭にはかなり響く。
今日はのんびりして、出発は明日にしよう。
浅い眠りのなかで、アレルはそう考えを巡らせていた。
第6話 ① 終わり ②に続く
***
ノッヂ登場の回です。
わかっているとは思いますが
お笑い芸人の某さんとはなんの関係もありません。
ノッヂは過去、お絵かきさんネットワークの
イラストバトル、エレメンタルワールド用に考えたキャラでしたが
N/Fの世界観にも合うということで取り込んでみたのです。
どうぞかわいがってやってください。
多少気性が荒いですがいいやつです。(多分)

エレメンタルワールド用の設定資料集より
ノッヂ=ルオークのラフ。