私のガン体験(5) | 松野哲也の「がんは誰が治すのか」

松野哲也の「がんは誰が治すのか」

治癒のしくみと 脳の働き

私のガン体験(5)



「カウントダウン呼吸法」

 ベッドに戻ると、カウントダウンの呼吸法を行いました。
眼を瞑り、軽い腹式呼吸(お腹を手で押して)をしながら、ゆっくりと息を吐き出すたびに、10,9,8,7,6、・・・・1と声には出さずに数を逆算するのです。これを2~3回繰り返します。

 30年ほど前にシルバ・メソッド(当時はシルバ・マインド・コントロールと呼ばれていた、アメリカ流の潜在意識を活性化することによる願望実現法)の講習で教わったものです(腹式呼吸は私が付け加えましたが)。


 エスカレーターやエレベーターでゆっくりと下に降りていく感じとか、ブランコにのってスイングするときのような浮揚感を味わうこともありました。
上記シルバ・メソッドでは、このような状態になることを「レベルに入る」といいます。意識がとぎすまされたままで、脳波が変わり、変性意識状態となって、予知や透視のような潜在能力が活性化される下地がつくられるというのです。
 100から数を下げていくと、途中で数を忘れるとか、気持ちよく眠りに落ちることもよくありました(δ波は睡眠時の脳波です)。


 このような呼吸法を繰り返したあと、起きてトイレに行くときなどは、身体の動きに注意を集中するようにしました。



「身体の動きに注意を向けて実況中継する(ヴィパッサナー瞑想)」

 例えば、歩くとき、足が床に着いたり離れたりする感触や、くるぶしの動き具合などを観察し、心の中で実況中継するのです。自分の体の動き具合を、後ろから別人が見るようにじっと観察するようなこともよく行いました。
 たとえば車を運転するときなど、車に向かって歩いている自分の後姿を右肩が少し下がって、足を引きずり気味だといった具合に。車のドアーを開ける感触。椅子に座りハンドルを手にとったときの様子。キーでエンジンを始動させる手の動かし方など。
 これらは、シルバ・メソッドの講習が終わってから、講師の故・山田孝男さん主催の瞑想会で教わったものです。
 後になり、この身体の動きに集中することを介した瞑想は、釈尊が体系化した究極の瞑想法である「ヴィパッサナー瞑想法」であることを知りました。

 入浴中、足の指を浴槽の前の壁面に着け、意識的に呼吸すると、息を吐いたり吸ったりするのに伴い、身体がお湯の中で沈んだり浮いたりします。
今まで気づかなかったこの不思議な感触を深く味わっていると、身体をもって呼吸して生きていることが体感でき、「存在」に対する気づきと深い感動が得られました。それと同時に、生きているのは奇跡的なことに他ならない。いってみれば、「今この瞬間に生きることがすべてである」ということが実感できるのです。

 瞑想ともいえる上記トレーニングを行っているとき、不安にしがみつく思考の流れは、跡形もなく消えていました。このようなことを日常茶飯事のこととして繰り返しているうちに、私の意識も変わり始めました。


 そのうち、寝てばかりいても仕方がないといって起き、読書を始めたのです。
読む本は、私たちの存在や宇宙の成り立ちに関するものが主でした。
 たとえばMichel Tarbot ” The Holographic Universe” (マイケル・タルボット『ホログラフィック・ユニバース - 時空を超える意識』)もその一つでした。
今まで私は、研究者として寝ても覚めても実験のことしか考えない生活を送ってきました。それが、一変したのです。