松野哲也の「がんは誰が治すのか」

松野哲也の「がんは誰が治すのか」

治癒のしくみと 脳の働き

松野哲也


1942年横浜市生まれ。

国立研究機関でインターフェロンの作用機作、ウィルス・化学発ガン、ガン胎児性タンパク質、腫瘍細胞ののエネルギー代謝機構、抗ガン物質検索などの基礎医学研究に従事。1996年渡米。コロンビア大学ガン研究センター教授。現在は退職しニュージャージーでノエティック・サイエンス研究室主宰。


自らのガン治癒体験をふまえて、ガンになった方からのご相談に応じています(ご希望される方は下記のメールアドレスにどうぞ)。


また日本・米国での講演活動も行っております。少人数でも会場を用意して頂ければお話しさせていただきますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。


著書に「ガンはこわくない」(中央アート出版社)、「癌では死なない」(ワニブックス)、。「プロポリスでガンは治るのか!?」(中央アート出版社、) 「がんは誰が治すのか」(晶文社)、「病気をおこす脳病気をなおす脳」(中央アート出版)など。




連絡先t.m.noetic@gmail.com

次回 一時帰国したときに ミニお話会をもつことになりました。

 

 

 

 

『Salt Vanity』 マレー・フレデリックス

南オーストラリアのエア湖(塩湖)の上に 本物の鏡を置き、湖が映し出しているものとは異なるグラディエーションが映されたフレームが正面に表れた作品。

 

 

 

日時

 2025年11月23日

演題

 1)  ガンの研究は 全く時代遅れ?  10:00~12:00

    2)  人工コロナウイルスと「殺人」コロナワクチン       

                   13:00~14:30

    3)  ココロとカラダ - ガンを超えて      14:30~18:00

参加費

 ¥1000/1演題 ¥2000/3演題

   (無料でも結構です)

  USBをお持ち頂ければ スライドをコピーして差し上げ

        ます。

場所

   東京都国立市中1-15-2 向陽ビル

  (富士見通り 国立市公民館手前)

  スペースコウヨウ 5F

      (入り口は 富士見通りから見て左横脇奥です。エレベーター

          があります)

 

 

 

 

 

学校嫌いの私は 卒業式なるものに出たことがありません(小学校は登校拒否。中・高は一貫していました。編入した都立高校と 進路を考え、退学し  再受験して 入り直した大学では  授業や実習に出席しないため 単位不足で放校。学位記も受け取りには行きませんでした)。大学院を修了したとき 就職のオファーは 幾つかありましたが  意に沿わないので断り、3年後になっても (それまでのように)1つの論文も書けないまま、いかに生きるか考え悩み続け 寝込んでいました。今をおいて 念願のガンの研究を 1人で始めほかはない と思い立ったのは  私の研究室にいた 大学院生たちや博士研究員が就職して去って行ったときでした。その時、私は既に 40代半ばにさしかかっていました。

演題1)で その後のこと などについて   2) で 打開策   3)で ガン(病気)は治療で治すものではなく、治るべくして治る。治療システム・ 薬は  元々 私たちの身体に備わっている、ということを中心に、未だ「未解明」である「意識」の一端に触れてみたいと思います。 内容は かなり難しいと思われますので、少し面白く わかりやすいスライドを 今 用意しています。ご参加のほど よろしくお願い致します。

  
 

前頭葉の腹内側白質の 約1/4 にある コリン作動性(アセチルコリンを神経伝達物質とする)神経経路が損傷すると、ドーパミン作動性経路が損傷した場合とは逆の効果、すなわち、夢を見る回数が減るどころか 増えるということが起こります。

 

現在では、アセチルコリンを遮断する抗コリン剤が 過剰な夢見引き起こすことは 広く知られています。言い換えれば、アラン・ホブソンが主張したところの 神経システムを遮断すると、ホブソンの理論が予測したこととは真逆の効果が生じるのです。

 

神経科学がフロイトに謝罪する必要があることは 明らかなこととなりました。

 

 

脳の中で 「願望」を司る部位があるとすれば、それは 中脳皮質ー中脳辺縁系ドーパミン回路です。

 

この経路は ホブソンが言ったのとは反対に、全く動機的に中立ではありません。

 

エドモンド・ロールズはじめ多くの研究者は これを「報酬系 (reward system)」と呼びました。

報酬系とは 少し難しく表現すると、誘因顕著性 (「欲しい」という気持ち、報酬への欲望や渇愛、および動機づけ)、適合学習 (主に 正の強化 及び 条件付け)、そして 正の感情値をもつ感情、とくに 快感を核とする感情(たとえば、喜び、多幸感、エクスタシー)に関与する精神構造群のことを指します。

 

PAG(中脳水道周辺灰白質)の情動システムの解明で名高いヤーク・バンクセックは、それを SEEKING システムの1つと呼び、食料探し等の機能における役割を強調しました。これは いってみれば、「動物が示すことのできる 最も精力的な探索行為や検索行為」を司る回路なのです。
 

幻覚や妄想の神経外科的な治療は 倫理的な理由で放棄されたわけではありません。

1950年代に広く利用されるようになった薬、すなわち 「メイジャートランキライザー」を使えば、より低い合併症発生率と死亡率で 同等の治療効果が得られることがわかったので 廃れていったのです。

これらの薬は、現在の「抗精神病薬」もそうですが  中脳皮質ー中脳辺縁系ドーパミンシステム と呼ばれる脳回路の末端で(側坐核のドーパミンD2受容体に結合することにより)神経化学物質であるドーパミンを遮断します。この回路は マーク・ソームズの患者さんと同様に、ロボトミーで切断される部位でもあるため、彼は これが 夢を生み出すシステムではないか という仮説を立てたのでした。

 

更なる調査実験で 彼の仮説は 確証されました。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この回路を薬理的に刺激すると、夢の頻度、長さ、強さ が 増加し、レム睡眠には 相応の影響がないことは 既に立証されていました。

この薬は レポドパ (L--ドーパ) で、オリバー・サックス(2007-2012まで コロンビア大学メディカルセンター教授 (精神神経学)。映画化された『レナードの朝』など多くの著書がある)が  脳炎後の患者さんを「目覚め」させるために使用したのと全く同じものでした。

 

パーキンソン病の治療に ドーパミン刺激薬(正確には ドーパミン生合成前駆体。(ドーパミン類似体は チロシン→L-ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンの流れで合成される))を使用する神経科医は、サックスのように 患者を精神病(統合失調症←精神分裂病)にしなければならないことは 以前から知っていましたが、異常に鮮明な夢を見るようになるのは この薬の最初の副作用であることが多いのです。

 

その後の決定的な発見(知見)は、この回路を構成するニューロン(その細胞体(質)は A10神経といって 中脳の腹側被蓋野にあります) が、夢を見ている睡眠中に 最大の割合で発火している、そして、同時に 標的の側坐核に 最大量のドーパミンを送り込む  ということでした。

 

従って、夢を見ることは  レム睡眠とは無関係に起こりうること、そして  中脳皮質-中脳辺縁系ドーパミン回路が 実際に 夢を見る主要な駆動因である ことは 明らかにされたものと考えられます。

 

 

 

マーク・ソームズは レム睡眠を維持したまま 夢見の喪失の原因となる損傷部位が  2つある ことを見出しました。

下図の黒い領域です。

 

 

               

 

右図の 大脳皮質の下部頭頂葉 (Inferior Parietal Lobule) 。頭頂葉は 短期記憶に需要な役割を果たしています。

それと 左図の 前頭葉の1/4の部分の白質 (Ventromesial Frontal White Matter)。これは 前頭皮質とさまざまな皮質下構造をつないでいる領域です。ここが 損傷を受けると、確実に夢見が停止します。

 

20世紀前半に 精神科医たちは 前頭葉を外科的に完全に破壊することで 深刻な精神症状が改善される例があることを見付けました。

その術式が  ノーベール医学生理学賞を獲得した 悪名高く、のちに廃止された ロボトミー (修正型前頭前野白質切除術) です。眼窩から小さな回転する刃を挿入し、前頭葉の1/4を切除するものです。

この手術には 主に 3つの心理的効果があることが知られています。第1に 陽性精神症状 (幻覚や妄想)の減少。第2に 動機付けの減少。第3に 夢見の喪失 です。実際、初期の精神外科研究者の1人は 手術後に 夢を見続けることは 予後が悪い兆候である と指摘しています。

マーク・ソームズ (ケープタウン大学教授  旧ドイツの植民地 アフリカ南部のナイビア生まれ) は  視覚部に損傷があると 視覚的な夢を見なくなる、言語野に損傷があると 非言語的な夢を見る、体性感覚野や運動野に損傷があると、非麻痺の夢を見る といった 当たり前のことに加えて、レム睡眠を発生させる脳の部位に損傷をもつ患者さんも まだ夢を経験していることを見つけました。

 

夢と催眠は 互いに相関している (つまり、たいてい同時に起こっている) が、同じものではない  私たちが「二重に解離可能な」現象と呼んでいるもの だったのです。

脳科学の分野では、50年近くもの間、脳科学者たちは 相関関係があること と 同一であることとを 混同していたのです。

夢見が レム睡眠を伴うことを立証するや否や、両者は同一のものだ という結論に 一足飛びに達し、相関関係の厄介な主観的側面を捨ててしまったのです。その後、ごく少数の例外を除いて、主に 内省的な報告ができない実験動物を使って、レム睡眠だけを研究してきました。

この偏りに 光が当たるようになったのは、マーク・ソームズが 神経疾患の患者さんを対象に 夢の「経験」に 神経科学的な関心を持ち始めたからでした。