ホテルマンは3年で辞めました【43.ショッキング】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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 その日、夕方出勤してフロントに入ると、何やらバックオフィス全体がざわついていた。


代表室に支配人とマネージャーが深刻な顔をして入って行くのが見えた。


この日、ナイトのパートナーは藤田さん。


2人でフロントカウンターに入って行く。


「おはよう!」


「あ、おはようございます。」


カウンターにはバイトの瀬戸さんしかいない。


「1人?他の人は?」


「トイレです。」


「そっか、引き継ぎ何かある?」


「あ、特には無いと思います。」


「そっか、じゃあ、あがっていいよ。お疲れ様〜。」


すると橋本さんがトイレから戻って来た。


「おはようございま〜す」


「おはよ。引き継ぎは無いでしょ?あがっていいよ(笑)」


「はい。あ、聞きました?」


「え?何を?」


「副支配人の・・・」


「えっ?副支配人?聞いてないよ!どうした?」


「昼頃に顔に汗びっしょりかきながら正面から入って来て、拳銃を持った男が追いかけて来るとか何とか言ってきて・・・」と、橋本さんが控えめな声で言った。


俺と藤田さんは顔を見合わせた。


「で?それから?」


「駐車場の出入り口からまた外に行っちゃったんですよ。」


「それから戻って来てないの?」


「はい。」


「マネージャー達は知ってるの?」


「はい、その時の副支配人の声がバックオフィスまで聞こえたみたいで・・・。」


「それで代表室で今なんか話してるのか。」


「副支配人どうしちゃったんですかね?」


「酒臭かった?」


「さあ・・・ビックリしたからお酒の臭いまでは気にならなかったです。」


その時、カウンター内の端っこで瀬戸さんが静かに立ってるのが目に入った。


「あ、ごめん!瀬戸さんあがって。お疲れ様〜。」


「あ、はい!お先に失礼しまーす。」


すると橋本さんも「じゃ私もあがりまーす。」


「ダメだよ!副支配人が戻って来るかも知れないから待ってなよ(笑)」


「やだ〜(笑)」


「ハハハハ、お疲れさん(笑)」


その日以来、副支配人の姿は見られなくなった。


マネージャーによると、その幻覚症状の事が致命的となりクビになったという。


開業準備室にいたシラフの頃、優しくて我々の気持ちが分かり経験豊富な、頼り甲斐のある上司だと感じていただけに、ホテルマン生活の中でもかなりショッキングな出来事であった。


〜つづく〜



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