「あの、もし良ければLINE交換しません?」
勇気を振り絞って聞いた。
「ん・・・ごめん、それはまだ・・・ね(笑)」
撃沈した拓也。
1時間程で食事を終え、外に出ると雨が落ちてきた。
「あ、雨だ。もし良かったら乗って行きません?送りますよ。」
「え?ん〜、でもまだこれくらいなら大丈夫ですよ(笑)」
だが、あっという間に雨足は強くなり、1秒でも外に出ていられないほどザーザー降りとなった。
「あ、もう大変だあ。送りますよ!」
「はあ、じゃあお願いしようかな。」
商業施設のパーキングに入り、自分の車を見つけた拓也が足早に車に走り寄った。
「どうぞ!乗ってください。」
だが、車の横で立ちすくんでいる佐伯。
「どうしました?」
「え・・・これが野村さんの?」
「はい!さあ、どうぞ。」
「あ、はい。」
「すいません、汚い車で。」
「いえ、そんなことないです!綺麗じゃないですか。」
「今朝慌てて掃除したんですよ(笑)」
「それにポルシェだったなんて・・・。」
「いやあ中古だし、小さいから窮屈でしょ?」
「そんなことないですよ。白くて小さいのって言ってたから、てっきり軽かと思ってました。」
レインボーブリッジを渡る車中では、珍しく佐伯の方から多くの質問をされる拓也。
「もう就職は決まったんですか?」
言葉遣いが敬語に戻っている。
「就職というか、父の会社に入るんです。」
「えっ?お父様は社長さんなんですか?」
「はい、○○○って知ってますか?」
「えっ!勿論知ってますよ!誰でも知ってる会社じゃないですか!」
〜つづく〜