ホテルマンだった頃の思い出。 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

芸能事務所の実録長編小説「夢に向かって!」その為短編2冊が電子書籍にて絶賛発売中!
https://bookwalker.jp/search/?qcat=&word=%E7%B0%97%E7%94%B0%E5%8B%9D%E4%B8%80&x=0&y=0

シティーホテルから新規オープンする某企業系のビジネスホテルに転職した20代前半の頃、開業日が迫る数日前からフロントのPCのプログラミング作業で、同系列のコンピューターサービスの社員3人が、連日泊まり込みでフロントマネージャーの要望を聞きながら作業をしていた。

そして無事オープンしてからも暫くは、PCの不具合やプログラムの変更などが予想される為にその3人のうち1人は交代で泊まっていた。

オープンして1週間が経った時、ほぼ完成されたプログラムに気を緩ませたのか、その夜に泊まっていた3人のうちの1人である20代後半のAさんが、酔っ払って深夜に戻って来ると部屋に行かずにフロントのバックスペースで酔い潰れてしまった。

更に明け方、俺がフロントに立っていると同僚が「ヤナダ!大変だよ!Aさんが吐いてる!」と。

エー!?と、バックスペースからいつの間にか代表室のソファーに移って寝ていたAさんが、そこの床に吐き散らしていた。

とりあえず同僚がAさんを用意していた部屋に連れて行き、俺は臭いが充満している代表室の窓を全開にした。

同僚が戻って来ると、俺は「コンビニ行ってくるからコレ片づけといて!」と。

同僚は嫌な顔をして「何でコンビニ?」と。

「ソーダー水買ってくる!」

同僚は不思議そうな顔していたので、「ソーダー水はこの臭い取るから!このままにしてたら代表が出勤してきたらバレちゃうだろ!」と、シティーホテルのBARにいた頃に学んだことを伝え制服のままコンビニへ向かった。

代表が出勤してくる9時まであと4時間。

ソーダー水を買って来た時には同僚が雑巾でカーペットを拭き終わっていたので、俺はそこにソーダー水をドボドボと撒いていった。

できることをやり終えた時には夜が明けていて、ぽつぽつとチェックアウト客が下りて来ていた。

チェックインが残っている早い時間でなかったのが幸いだった。

日勤の女子社員3名が出勤して来ると、何も言わずに代表室に行かせた。

「どうしたんですか?」と、不思議そうに聞いてくる女子社員。

「何も気づかない?」

「えっ?何?」

「変な臭いしない?」

「臭い?・・・別にしないよ」

「よしっ!(笑)」

俺と同僚はホッとしてガッツポーズ。

代表が出勤して来る直前に全開だった窓を閉め、女子社員達に数時間前のA氏の出来事を伝えると当然ながらビックリしていた。

9時前に代表が出勤して来た。

ジッと耳を澄ます5人。

1分、2分、3分・・・10分、代表は何も言ってこない。

こうして明け方の事件は解決したのだった。