6月の段階で39度をマークするという灼熱の2022年。みなさん、どのように暑さ対策をしているでしょう。私はくそ厚い中、うろうろと街を徘徊しています。
・高円寺辻占とは
JR中央線高円寺駅の周辺は昭和の香り漂う街。赤提灯が軒を連ね、ストリートミュージシャンが楽器をかき鳴らし、ストリートオールドボーイが広場に座り込み、多種多様な人種がひしめいています。
私は2022年5月から、この高円寺の街を「辻占 一件 500円」という幟旗を立ててうろつき、ご縁の結ばれた方々を路上で占わせてもらっています。
辻占とは一に「辻(交差点)に立ち、そこで聞こえる市井の人々の声や歌などから占うもの」。橋に立って行き交う人たちの言葉から占う「橋占」と同じものですね。そしてもう一つ、時代劇にも見られますし現代でも商店街や駅前などで机を前に座っている占い師。これもまた辻占、もしくは辻易者などと呼ばれてきました。
ただしこの辻占は場所が路上であるというだけで、スタイルとしては受け身。それこそ館や電話占いなどで「占いたいお客さん」がくるのを待機しているのとなんら変わりがありません。
こうした受動的な姿勢が、占い師のポジションを低めている要素のひとつではないかと私は考えました。
受動的なビジネススタイルであるがゆえに、宣伝などはするとしても常に待機するばかり。昨今、少しばかり改善の兆しが見られるものの館のブースでひたすら待機しても交通費すら出してもらえず、月に何十時間も待機ノルマを課せられるにも関わらず一切の保証のない電話占い師……などいまだに「当然の商習慣」であるとされています。
経営者側からすればシステムや場所を無料で貸し出し、宣伝も少ししてやるのだから、そこで相殺されているとの感覚なのでしょう。ふざけんな(笑)。
こうした状況に不服であるからこそ「能動的な占い師」というものを目指すことにしました。
また「受動的な占い師」でいると、「占いをしたいお客さん」とだけ接することになります。無駄がありませんが、それだけに広がりもありません。
場所を固定せず、自ら街の中を歩き回り、そこで出会った人が興味本位、たまたま占いたいことがある等々さまざまな理由から声をかけてくれることで成立する「能動的な占い体験」を求めて、この高円寺辻占を始めたのです。
高円寺に場所を定めたのは、商店街の規制が厳しくなく、またみかじめを接収せんとする反社会的な組織なども幅を利かせていない上に人の賑わいが活発で、ストリートミュージシャンやアーティスト、お笑い芸人なども活動しているという土地柄からです。路上での占いにも寛容なんですね。
毎週金曜と土曜の20時くらいから0時、1時くらいまで。もちろん天候や私の体調、気分に左右されますが基本はこのパターンで高円寺の辻を徘徊しながら占いを提供しています。
目標はこの「辻占」をムーブメントとして定着させること。
次第に認められ、高円寺と言えば辻占に代表される「新しい占いの聖地」と呼ばれるようになったらいいなあと思って活動しています。あ、でも、ぜんぜんそんなことにならなくてもOK。何しろ本質的には自己満足のためですからね。
幸いにも好意的に受け入れてくれるお店や街にいる人たちが多いので、一晩で10件〜20件近くのご依頼を受けています。アベレージは10件ちょいかな。
高円寺の飲み屋街はテラス席というか、外席を出しているお店も多く、そこで私を見かけた飲み客が「面白そうだからやってよ」と声がかかることも多いです。
また駅の北口、南口の広場、商店街の路上などあらゆる場所で占っています。お店に招かれることも。
最近ではリピーターさんも増えて、実に順調……と言いたいところではあるけれど、問題点がないわけではないんですね。
問題をあげつらう(笑)前に、私の辻占での営業スタイルとモットーを挙げておきましょう。
・興味を持ってくれた人(幟旗に関心を向ける、「占い?」と声を出す等々)に「歩きながら路上で占いをやっているんですよ」「気になったら声をかけてくださいねー」とのみ説明をする。
・「占いやってますよ、いかがですか?」などと売り込まない。
上記2点を意識して辻占をおこなっています。そうでなくてもうさん臭い「占い師」なんて存在から「どうだどうだ」と押し付けられたら、まずおれならキレちゃうし。占いを「やってみたい」と能動的な姿勢になった人とだけ占いをやりたいですからね。
ポイントは「こちらから占いさせてくれ(金くれ)などと言わない」ことです。
路上を徘徊してモノ(占い)を売るという意味では行商のようなスタイルですが、ノボリを立ててのんびり歩いているだけで売り文句や口上なども叫びません。
500円という格安料金にしていますが、これは「無料だと余計にうさん臭い」からです。
また路上で占う関係上、占うときには端に寄りますし、車や通行者がきて邪魔になるようならちゃんと避けます。というか辻占じゃなくても避けるよね、普通に。
つまり「売り込みかけない」「邪魔しない」をモットーに辻占をおこなっています。おかげさまで基本的にはお店の人からアレコレ言われることもなく、ほほえましく見守ってもらっているんですね。
ところがここ最近、2回ほどちょっと怒られてしまいました。
最初はガード下、高円寺ストリートという飲み屋街での出来事です。
そこを歩いていたらノボリを見て「やってみたい」と3人組に声をかけられました。邪魔になるといけないからとすでに閉店しているお店の前、道の端に寄ってから占い開始。
すると向かいの(いつも誰も座っていない外席や設置物で通路の幅を半分ほど使っている)お店の店員がけっこう憤慨した感じで「道ふさぐな。他いってやれ」と言ってきたんですね。
端に寄ってるし、人数だって私を含めても4人なので通路を塞ぐようなことはないと思うけどと見渡してみると、文句を言っていたお店の隣のお店から外国人集団が出てきていましら。その集団がどうやら固まっていたので、通路が塞がれていたみたい。
実際は私はあまり関係がないのだけど、まあ占いなんかやっているからこそ外国人集団も固まっていたのかもしれないと反省しました。ただまあ塞いでいる本体じゃないし、なんでそこまでキレた言動をするんだろうなと不思議な気持ちになりました。
もうひとつは、テラス席を出している居酒屋さん。駅チカなのもあってか大変繁盛して外の席も埋まっています。
通りかかったところノボリを見た人が私を呼び止め、占いをしてくれとのこと。喜んで応じました。
ところが占いも終わりに近づいたころ、店員さんがかなりの怒りを含んで「ちょっと店の許可を取ってよ」と言ってきたんですね。「あ、すいません」と誤って、占いを手仕舞いして帰ろうとしたところ、他の外席のお客さんに「占いしたいんだけど」と声をかけられました。
怒られたばかりですから「ここのお店ダメみたいで、今怒られたんですよ。許可とらないとダメだって〜」と説明をしていたら、今度は年配の非常に目つきの悪い店員(店長さん?)が飛び出してきて「何やってんだ、ああ?」とメンチを切るわ恫喝的態度だわ。それに次いでさっきの店員も飛び出してきて「何やってんの!」と。
怒られたお店では二度とやらない主義ですから、もちろんお断りしていて、なぜできないのかを説明していたのに頭ごなしに怒鳴る怒鳴る。
もちろんお店の人からしてみれば、自分たちのところの大事なお客さんに何か押し売りでもしているように見えるのでしょうね。
こればかりは「占い師」そのものがうさん臭くて、人によっては詐欺師として毛嫌いしている場合もありますから、その気持ちはわからなくもありません。
ただまあ、私のスタンスですと「依頼されたので占っている」わけで、こちらから頼んでいるわけではないのですね。そこは終始見ているわけではない店員さんにはわからないのでしょう。
でも、お客さんたちの前でブチギレて恫喝的な言動て。すごい客商売をなさっておられるんだなあとびっくりさせられます。
私の側の言い分や事情などを理解してもらおうと思いませんから、こうしたトラブルが生じた場合にはそのお店のお客さんから依頼されても受けることはせずに「あー、ここのお店では占ってはいけないので〜」で断るしかないんですよね。
お店の方針としてダメなら、それに逆らうことなどありません。ひと言「ダメだよ」って伝えてくれればいいだけなんだけど、なぜこうもキレてんのか(笑)。
やっぱり怪しい押し売り野郎に見えているんだろうなあ。
形としては「外席のお客が、自分の意志で路上にいた行商人から商品を購入する」のと同じなんだけど。それでもここまでキレるだろうかと考えたとき、それはないな、と。占い師ならではだよなあ、これ。
今後も同様の出来事はありそうですけど、すべてのお店から出禁にならなければOKということで。
まだまだくじけることなく週末の夜には高円寺駅周辺を徘徊しようと思います。
ちなみにブチギレ店員たちのいるお店の向かい側にも外席を出している居酒屋さんがあるのですが、このトラブルの直後にそちらのお店のお客さんから声がかかり店員さんに尋ねたら占ってもOKでした。
今後はNGのお店のお客さんから声がかかってもすぱっとお断りして、向かいのお店のお客さんから声がかかったらにこやかに応じる感じですね。なんか性格悪い対応っぽいけど、そこがいい!
と、ひとまず3ヶ月目に突入した高円寺辻占の現場からは以上です。