読書日記vol.10 | R.Gallagherの世界一面白いブログ!!

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今晩は。

村上春樹さんの新刊、『女のいない男たち』を読みました。

読んだと言っても今回は短編集でまだ冒頭の二作品である「ドライブ・マイ・カー」と「イエスタデイ」を読了しただけですが、
今回の新刊は個人的にも満足出来る内容で安心しました。

実を申しますと2004年に発表された『アフターダーク』以降の村上春樹さんの作品や言動には僕は興味を持てずにいました。

『アフターダーク』でそれまでは恐らく意図的に避けていらしたのであろうバンド青年を主要登場人物としてお描きになった村上春樹さんには、そのテクストの見事さも相俟って、ここで作家活動の幕引きをされたら格好良いのになと当時は感じましたし、自宅療養期間中に『1Q84』のWikipediaを確認して以降も、その実感は強くなるばかりでした。

村上春樹さんのお書きになる文章の最大の持ち味は、読んでいて疲れないライトな文体と、折に触れて提起される深みがあり示唆に富んだ語り手が展開する観念的試行錯誤、そしてモチーフとなった出来事や事件がユニークな虚構として変換された物語の展開だと考えているのですが、『1Q84』はWikipediaを確認した限りではその内容や登場人物の造形、そして一番肝心な粗筋も村上春樹さんがお書きになったテクストとしては荒唐無稽過ぎて、従来のファンには微妙なんじゃないか?と勝手に独りで推測していました。

去年のこの時期に出た『色彩を~』も、自分は正直、蒐集癖があるので買いはしましたが、どうにも興味が持てず未読のままでした。

しかし今回の新刊は、短編集と言う事もあり、試しに読んでみたのですが、これが実にハマりました。

これは持論なのですが、一人の作家に興味を持ったら、短編集からチェックすると良いと僕は考えています。そこでその作家の文体や世界観に牽かれる作品が一篇でも集録されていたら、本格的に長編の代表作にも安心して手を伸ばせるからです。

かく言う僕自身も村上春樹さんの小説が好きになったきっかけは『TVピープル』と『パン屋再襲撃』でした。そこで展開されていたカフカ的な不条理な世界観や物語の展開と、それを飽きさせない何処かライトな文体にはとても牽かれるものがありました。

今回の村上春樹さんの短編集を従来のファンとして一言で要約させて頂くなら、「原点回帰」の一語に尽きます。

書きたい事を、シンプルに書く、
そんな村上春樹さんの本来のスタイルが今作では貫かれています。

勿論、物語の内容はお歳を重ねられた分、より深みのあるものに進化されていますし、技術的な事を指摘させて頂くならジェイムズ・ジョイス的な「意識の流れ」が語り手の語りの部分に多数使用されていて読んでいてとても楽しい文章でした。

近年ではノーベル賞云々でばかりメディアには取り上げられがちな村上春樹さんですが、これなら今後も楽しい新作をファンに贈り届け続けてくれそうで、僕も嬉しいです。

ですので、村上春樹さんは『アフターダーク』で御自身の作家生活の幕引きをされるべきだったと言う僕の前言も撤回させて頂きたいと思います。

最後までお読みになって下さいまして、
本当に有り難うございました!!

それではまた、
次回の日記にて!!