その時の天候は雨で、その雨もまた昨夜からずっと降り続けているものでもあった。
僕が目を覚ましたとき、窓の外では雨のやりがごうごうと降り続いていて、時計を見ると朝の10時半だった。
目を覚ましても、意識がはっきりと覚醒するにはまだ時間を要していたようで、身体を引きずりながらベッドを這い出る。
暦からすれば春も間近というのに、春の足音が聞こえる気配はない。
かわりに雨の吹きすさぶ音だけがむなしく部屋の中に響いていた。
誰もいない部屋の中は、まるで忘れ去られたおもちゃ箱みたいで、昨夜のこの部屋で起きていた夢のような時間を想起させた。
とめどなく僕の身体は求められ、また僕も彼女の体を求める。
横に目をやれば求められ、求める男女の姿がそこにはあった。
萎びたからだも、萎びたあそこも僕たちからしてみればそれはもう滑稽で、だけどその萎びた感じが余計に僕らを気持ちを高揚させる。
何年間も感じていなかった感覚が、朝の日差しのように眩しく、恥ずかしく感じられていた。
誰かにすがることも、誰かにすがられることもなかった当たり前の日常から追いやられた世界。
そこに僕らは土足で踏み入り、むさぼる様にお互いのプライベートを垣間見て行った。
「ちょっと、やめて」
「いいだろ」
「でもっ・・」
「今更なんだよ、恥ずかしがるな」
「でも」
「だまれ」
「うん…」
クチュ。
脳みそがとろけるような感覚に陥って、それでまた目の前の視界があやふやとなる。
自分の中では意識がはっきりとしてるつもりでも、後で冷静になってみればそれは明らかにクスリでも打ったあとのような感覚に似ていた。
隣の男は目を見開いて、目の前の女を乱暴に貪っていた。
女もまたそんな男に快楽を感じて、抵抗するふりをしているだけ。
ふたりの間にはパン、パン、とお互いの鼓動の音だけがむなしく響き、やがて降り出した雨音でかき消された。
「おい、好きか?」
と、男が訊く。
「ええ、大好き」
と、女は言う。
「嫌いになっても好き。嫌いになられても好き。気持ち悪がられても、虐げられても、どんな扱いを受けたって好き。大好き」
短く断片的に紡ぐその言葉に力はなく、ただ強い意志だけが敢然とそこにあった。
──ふと気がつけば涙を流していた。
上を向いて、零れる涙を落とすまいと必死になる。
外では相変わらず雨が降り続いていた。
ごうごうと唸るように、寂しさを紛らわすかのように。
大粒の雨はやがて降り止むことだろう。
降り止んだ後の地面は湿って、照りつける太陽で熱気がそこここに散漫する。
散漫した熱気が肺に入ると、今度は身体の中から吐き気をもよおす。
そして僕はやがて呆れて破笑した。
僕が目を覚ましたとき、窓の外では雨のやりがごうごうと降り続いていて、時計を見ると朝の10時半だった。
目を覚ましても、意識がはっきりと覚醒するにはまだ時間を要していたようで、身体を引きずりながらベッドを這い出る。
暦からすれば春も間近というのに、春の足音が聞こえる気配はない。
かわりに雨の吹きすさぶ音だけがむなしく部屋の中に響いていた。
誰もいない部屋の中は、まるで忘れ去られたおもちゃ箱みたいで、昨夜のこの部屋で起きていた夢のような時間を想起させた。
とめどなく僕の身体は求められ、また僕も彼女の体を求める。
横に目をやれば求められ、求める男女の姿がそこにはあった。
萎びたからだも、萎びたあそこも僕たちからしてみればそれはもう滑稽で、だけどその萎びた感じが余計に僕らを気持ちを高揚させる。
何年間も感じていなかった感覚が、朝の日差しのように眩しく、恥ずかしく感じられていた。
誰かにすがることも、誰かにすがられることもなかった当たり前の日常から追いやられた世界。
そこに僕らは土足で踏み入り、むさぼる様にお互いのプライベートを垣間見て行った。
「ちょっと、やめて」
「いいだろ」
「でもっ・・」
「今更なんだよ、恥ずかしがるな」
「でも」
「だまれ」
「うん…」
クチュ。
脳みそがとろけるような感覚に陥って、それでまた目の前の視界があやふやとなる。
自分の中では意識がはっきりとしてるつもりでも、後で冷静になってみればそれは明らかにクスリでも打ったあとのような感覚に似ていた。
隣の男は目を見開いて、目の前の女を乱暴に貪っていた。
女もまたそんな男に快楽を感じて、抵抗するふりをしているだけ。
ふたりの間にはパン、パン、とお互いの鼓動の音だけがむなしく響き、やがて降り出した雨音でかき消された。
「おい、好きか?」
と、男が訊く。
「ええ、大好き」
と、女は言う。
「嫌いになっても好き。嫌いになられても好き。気持ち悪がられても、虐げられても、どんな扱いを受けたって好き。大好き」
短く断片的に紡ぐその言葉に力はなく、ただ強い意志だけが敢然とそこにあった。
──ふと気がつけば涙を流していた。
上を向いて、零れる涙を落とすまいと必死になる。
外では相変わらず雨が降り続いていた。
ごうごうと唸るように、寂しさを紛らわすかのように。
大粒の雨はやがて降り止むことだろう。
降り止んだ後の地面は湿って、照りつける太陽で熱気がそこここに散漫する。
散漫した熱気が肺に入ると、今度は身体の中から吐き気をもよおす。
そして僕はやがて呆れて破笑した。