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じじい司法書士のブログ(もんさのブログ改め)

法律事務所の中で司法書士・行政書士を個人開業しています。50近くになって士業としての活動をはじめました。法律事務所事務員と裁判所書記官としての経験を生かして、少しずつ進歩していければと思っております。

平成26年9月16日(火)午後6時から、日司連ホールで開かれた

1.「土地収用と東日本大震災復興特別区域法について」

2.「地域のための個人情報保護と共有の実務」

と題する研修会に参加しました。

この研修会は、震災相談員登録をしている会員が知識のブラッシュアップを図る目的で開催されました。

東京司法書士会が行っている震災相談





講師は、「災害復興法学 」を提唱し、実践していらっしゃる

岡本正弁護士 でした。



平成26年5月1日から施行された改正「東日本大震災復興特別区域法」についての知識に乏しかった私には興味深い内容でした。



通常、自治体等が事業計画に沿って事業用地を確保するときは、

(1)用地交渉をし

(2)売買契約をして

(3)売買代金を支払う

ことによって、土地の所有権を取得していきます。



しかし、

・ 土地所有者が不明で、任意での買取りが見込めない

・ 所有権や境界に争いがあり相手方が確定しない

・ 条件が折り合わずに、所有者の承諾が得られない

といった場合には、収用手続による土地収用が必要となります。



皆さんご存じのとおり、憲法29条1項は「財産権の不可侵」について規定しています。国民の財産権は最大限に尊重されるべきなのですが、同条3項では、「正当な補償」による公共利用について定めています。

この憲法29条3項を具体化しているのが「土地収用法」です。

公共の利益となる事業の必要な

(1)収用の要件

(2)適正な手続

(3)正当な補償

について定めています。



まず、

【1】自治体等が行う事業の公共性の認定が国土交通大臣又は知事によって行われます(事業認定手続)。

そして

【2】各都道府県収用委員会により補償額の決定が行われます(収用裁決手続)。



復興事業がすべて事業認定されるわけではありません。特に、防災集団移転促進事業については、都市計画法上は50戸以上の集団住宅は収用適格事業ですが、土地収用法では収用対象ではありません。

また、収用裁決は厳格な手続に基づいて行われます。起業者(事業を行う者)は、事業認定の告示の後、「土地調書」「物件調書」を作成しますが、実際の現地調査は必須です。調書の作成には、共有地であれば共有者全員で1つの調書を作成します(一人でも判子を押してくれないと、調書はできません。)。起業者が過失なくして知れない者を除き、権利者の立会いが必要です。



そうなると

【公益性認定】事前説明会→事業認定申請→公聴会→国の審議会等の意見→認定告示

……と東日本大震災の加速化措置 を適用しても、約6か月かかります

【補償金額決定】土地調書・物件調書→権利取得裁決・明渡裁決申請→公告縦覧→裁決手続開始決定→審理→権利取得裁決・明渡裁決→補償金支払→権利取得・明渡し

……相手方が判明していたとしても、約1年6か月~2年かかります

合わせると、2年~2年6か月かかってしまいます



また、事業対象の土地のうち、一部でも公益性認定手続が終わっていない場合には、事業全部について以降の手続が進行しません。仮に、99%の土地につき手続が完了していても、1%の土地について未了の場合には、補償金支払い→権利取得・明渡しに至りませんから、全体が工事に着工できないことになります。



そこで、改正「東日本大震災復興特別区域法」 が成立し・施行されました。