平成26年5月1日、改正「東日本大震災復興特別区域法」が施行されました。
この法律の特徴は
① 土地収用手続きの迅速化(早期着工を可能にしました)
② 収用適格事業の拡大(小規模団地住宅施設整備事業が創設されました)
です。
また、法改正を受けて、政府側では、運用のガイドライン・通知(平成26年5月20日国土交通省総合政策局長通知)を整備し、具体的に省略できるポイントや、収用委員会での判断基準を示すことで迅速化を後押ししています。
【法改正】
1.事業認定までの期間短縮
国土交通大臣又は知事は、事業認定申請書受理から
(改正前)「3か月以内に認定処分をする努力義務」
→(改正後)「2か月以内に認定処分をする努力義務」
2.収用裁決申請書類の省略
(改正前)
① 事業計画書・事業計画図
② 土地の所在・地番・面積
③ 土地所有者及び関係人の住所・氏名(登記簿の記載では足りず、実体的な所有者の住所・氏名が必要。)
④ 土地調書
⑤ 損失補償見積額
……などの関係書類の提出が必要でした。
(改正後)
土地調書、土地面積、損失補償見積額→省略、後で補充すれば足りる
住所・氏名→登記簿で確認できる範囲で足りることとされました。
【申請時期の前倒しが可能になります。住所氏名確認が登記簿だけで足りることが明確になりました。】
3.緊急使用の要件緩和
(改正前)
「公共の利益に著しく支障を及ぼす虞(おそれ)がある場合」において、収用前に緊急使用ができる
(改正後)
(緊急使用をしないことで)「東日本大震災からの復興を円滑かつ迅速に推進することが困難」な事情があれば、収用前に緊急使用ができる
【補償金の支払いが終わらないと着工できなかったところが、緊急使用のハードルが下がって、工事着工が前倒しできることになりました。】
4.緊急使用の期間延長
(改正前)「緊急使用の使用期間は6か月以内」
→(改正後)「緊急使用の使用期間を1年に延長」
5.明渡裁決早期化の努力義務
(改正前)
収用委員会は、審理の促進を図り、裁決が遅延することが無いよう努める努力義務
(改正後)
明渡裁決の申立てについては、できる限り6か月以内の処理をするよう、収用委員会に義務付け
6.小規模団地住宅施設整備事業
(改正前)
都市計画法の都市施設である「一団の住宅施設」は、収用適格事業であるが、そのためには、「50戸以上」の住宅施設及び付帯施設であることが必要
(改正後)
一団の住宅施設を「5戸以上」とした
【小規模な防災集団移転促進事業においても、都市計画法に基づく収用対象となったことで、任意交渉による用地取得以外に、収用による土地取得の道が開かれた。】
【運用改善】
1.収用委員会への指針
「起業者が申請に要する資料等を最小限にするよう」「過大な書類提出が裁決の遅延を招かないよう」収用委員会へ通知
【収用は個人の財産権を制限してしまうため、収用委員会は資料等を過剰に求めがちだった】
2.緊急使用許可の時期
緊急使用の許可のために、収用裁決申請時に省略した書類を補充する必要がない。
緊急使用許可の書類も所有者氏名等は登記簿の確認で足りる。
緊急使用許可後の所有者への通知も、登記簿上の名義人への通知で足りる。
【「事業の実情に照らし、調査人員、費用、時間等を勘案して合理的と考えられる範囲で必要な権利者の調査を行っている」場合は、緊急使用許可を認める。】
収用手続は個人の財産を強制的に奪うことになるため、厳格な手続が求められます。しかし、東日本大震災の被災地では、防災集団移転促進事業の進展が喫緊の問題です。そのため、「東日本大震災復興特別区域法」が改正され、運用の改善が行われました。少し乱暴に感じるかも知れませんが、当面の問題解決のためには、致し方ないのではないかと思っています。
収用手続にあたっては、上記のとおり、登記簿の記載の確認をもって足りる運用が行われています。司法書士として、司法書士会としても、何らかの形でお手伝いすることができるのではないかと思っています。