先日、「会社法制の見直しに関する要綱案と会社実務への影響」と題するセミナーに参加しました。要綱案と中間試案を比較し、改正項目全部に触れた有益なセミナーでした。
会社法改正の今後のスケジュールですが、改正案が秋の臨時国会に提出されるのか、来年の通常国会に提出されるのかにもよりますが、施行時期は、もっとも早くて平成25年4月1日、次に考えられるのが平成25年10月1日、遅くとも平成26年4月1日と考えられます。法務省としても廃案だけは避けたいのだと思います。
まず、今回改正が断念された項目があります。
(0)公開会社法の不採用
(1)社外役員の要件に、重要な取引先の関係者でないことを加えること
(2)従業員代表監査役
(3)組織再編の際に従業員の意見等を開示すること
(4)組織再編条件の公告後に取得した株式に係る株式買取請求の否定
また、単純な断念とはいえない項目もあります。
(1)社外取締役の選任義務づけ
(2)親会社と子会社との間の利益相反取引について、親会社が責任を負うこと
(3)多重代表訴訟のB案の注(子会社取締役の監督を親会社取締役会の職務とするなど)
社外取締役の選任義務づけについては、要綱案に法制審議会の部会としての附帯決議がなされています(このような附帯決議は初めてだと聞いています。)。
「……現時点における対応として、本要綱案に定めるもののほか、金融商品取引所の規則において、上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要がある。」と文言は努力規定ですが、かなりきつめです。
また、社外取締役及び社外監査役に関する規律として「監査役設置会社(公開会社である、かつ、大会社であるものに限る。)のうち、金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容とするものとする。」とあります。「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告の内容とするとありますが、置くことが相当でない理由というのは、なかなか書きにくいのではないでしょうか。そうなると、むしろ選任しようという強い方向付けとなるのだと思います。
監査・監督委員会設置会社制度の創設(「アメとムチ」が用意されています。)
「果たして、このような制度を採用するような会社があるのだろうか……(委員会設置会社も200社程度しか採用がないのに)。」と私は思っていました。しかし、今回のセミナーで説明を聞いて、採用する会社は(上場会社を中心に)増えるのかも知れないと思いました。
制度の特質は次のとおりです。
(1)監査役はおらず、取締役のみ。
(2)取締役3人以上で監査・監督委員会を構成する。
(3)監査・監督委員会の過半数は社外取締役でなければならない(∴社外役員の最低人数は2人)。
(4)指名委員会・報酬委員会は置かれない。
(5)代表取締役と業務執行取締役が業務執行を行う(執行役ではない)。
(6)①取締役の過半数が社外取締役である場合
②定款で定めた場合は、業務執行の決定を取締役に委任することが可能(取締役会決議事項を減らすことができる…アメ)
(7)監査。監督委員会が事前に承認した場合には、利益相反取引についての取締役の任務懈怠の推定規定(会社法423条3項)の適用がない(アメ)。
監査役会と監査・監督委員会との相違点
監査役 監査委員 監査・監督委員
(監査役設置会社) (委員会設置会社) (監査・監督委員設置会社)
適法性監査 妥当性監査 適法性監査
独任制 独任制無し 独任制無し
常勤、半数社外 過半数社外、常勤性不要 過半数社外、常勤性不要
任期4年 任期1年 任期2年
……他にも、監査役会設置会社では、監査役会の権限とされているもの、個々の監査役の権限とされているものについて、いろいろな定めがあります。
監査・監督委員会設置会社制度へ移行するか否かの検討要素
(1)社外役員の人数をどうするか。人員確保は容易か。
(2)「監査役」と「監査・監督委員」の評価(監査・監督委員は取締役だから、取締役会の決議に加わることができるのが特徴。投資家からすると、取締役会での1票を持っている監査・監督委員に対しての評価は高いのではないか。)
(3)任期、常勤性の評価(監査役は4年拘束、また、常勤となれば他に職業を持つことができない。)
(4)アメの評価(決定権限の委譲、利益相反取引についての任務懈怠推定規定の適用排除)
(5)ムチ(取引所、機関投資家、議決権行使助言会社の動向)