この記事の内容は、様々な資料をもとに書かれています。
内容の中には一部ないしは全体を通して、資料に基づく偏見や誤りがある可能性があります。また、筆者自身による偏見や誤りがある可能性も当然否定できません。
できる限り公平かつ事実に基づいて記事を書きたいと考えていますが、この点を踏まえていただけましたら幸いです。
今回のテーマは秘密結社フリーメイソンです。
はじめに
今回はフリーメイソンについての概要をまとめます。フリーメイソンに
ついては様々な著作が出版されていますが、ここでは大まかに全体像を掴むことに主眼を置きたいとおもいます。詳細については別の機会に譲ることにします。
フリーメイソンの起源について
西欧文明が近代社会へと転換していく過程で、市民革命とよばれる三つの革命の存在が大きいものでした。この三つの革命というのはイギリスの市民革命、アメリカ独立革命、そしてフランス革命です。
この三つの革命の内、アメリカ独立革命とフランス革命という二つの革命において現在も存続している組織が重要な役割を演じました。それはフリーメイソンと呼ばれる秘密結社です。
マスメディアやインターネットなどでも、しばしば秘密結社フリーメイソンに関する都市伝説などがささやかれていますので、フリーメイソンについては多くの人がその名前くらいは聞いたことがあるのではないかと思います。ここではフリーメイソンについて説明していきたいと思います。
フリーメイソンは正式にはフリーメイソンリーと言います。日本ではフランス風にフラン・マッソンなどと呼ばれたこともありました。メイソンとは石工職人のことです。フリーメイソンは「自由な石工職人」を意味しますが、現在では職種とは関係なく友愛結社という役割だけが残っています。
諸説ありますが、会員は現在世界に600万人いるとも言われています。フリーメイソンの入会条件は何らかの宗教を信じていることです。無神論者はフリーメイソンにはなれないとされます。
神を信じてさえいれば、アブラハムの宗教であるユダヤ教・キリスト教・イスラム教でなくとも、仏教でも神道でも信仰しているならば入会資格があることになります。
一方で、ローマ・カトリック教会は、フランス革命の頃よりフリーメイソンを批判してきた歴史があり、フリーメイソンに入会した者は破門されました。
また、フリーメイソンは成年男子であること、社会的な地位や品性などが条件とされています。フリーメイソンの外郭団体や一部のロッジでは女性の会員を認める場合もあります。
フリーメイソンは秘密結社とも表現されるように、会員同士での秘密を厳守し、その核心部分は決して一般社会に開かれることはありません。
フリーメイソンの起源については多くの説が存在します。これらの説はどれが正しくどれが間違っているのか、判別することがほとんど不可能であるようなものばかりです。文献上、10世紀のイギリスに石工技術が持ち込まれ、職人たちが集会を開いていたという記述が残っています。
スコットランド生まれのアンドリュー・ラムゼイは、フリーメイソンは十字軍の石工と聖ヨハネ騎士団の相互作用によって生まれたとしています。また、テンプル騎士団の儀式などがフリーメイソンの儀式に多数取り入れられているとも言われています。
14世紀にフリーメイソンという言葉ははじめて登場したとされ、16世紀にはイギリスの様々な地域にフリーメイソンのロッジが置かれていました。1717年にはフリーメイソンのロッジを管轄する最古のイングランドのプレミアグランドロッジが誕生しました。続いてアイルランドやスコットランドでもグランドロッジが設立されました。
イギリスのプレミアグランドロッジの紋章
1737年にフランスでも最古のグランドロッジが誕生し、1773年には歴史的に重要な大東社と呼ばれるグランドロッジも誕生しています。
フランス革命に多大な影響を与えたとされるフランスの大東社の紋章
北アメリカでも、18世紀にはニューヨーク、ニューイングランド、ペンシルベニア、サウスカロライナなど各地にグランドロッジが誕生しています。
フリーメイソンはどういった組織なのか
フリーメイソンに入会する際、参入儀礼というものを受けることになります。参入儀礼がどういったものか不明な点もありますが、様々な資料に基づくと参入者は目隠しをされている描写が多数描かれています。
イギリス系のフリーメイソンでは宣誓、秘密の伝授、前掛けの授与という三つの儀式を行われると言われています。リュック・ヌフォンテーヌによれば、フランス系のフリーメイソンは、聖杯と呼ばれる苦い飲みものを与えられ、地の試練、水の試練、火の試練、空の試練というものを課されるとしています。
フリーメイソンは徒弟・職人・親方という三つの階級から構成されており、昇級のたびに儀礼を受けるとされています。
徒弟・職人・親方の上にも更なる階級があります。一例でいえば、アメリカのスコティッシュ・ライトは33階級にも及び、非常に強いヒエラルキーの構造になっています。
スコティッシュライトの紋章双頭の鷲 王冠の上には33という数字が三角形の中に描かれている
フリーメイソンは自分以外のフリーメイソンを暴露することが許されていません。フリーメイソンは様々な方法でシグナルを送ることで一般人からフリーメイソンの会員を見分けることができます。
いくつかありますが、有名なものには「見えぬ手の印」と呼ばれるものがあります。フリーメイソンは社交の場、写真、映像などで手を懐に入れることがあります。これを「見えぬ手の印」と言います。
歴史上多くの著名なフリーメイソンが、肖像画や写真、最近では映像の中でこの「見えぬ手の印」を示しています。
バージニア権利章典をまとめたアメリカの政治家ジョージ・メイソンの「見えぬ手の印」
また握手を行う時に、特別のシグナルを送っていると言われています。フリーメイソンは一般人には分からないように互いに相手がフリーメイソンかどうかを確認し合っているのです。
フリーメイソンには寛容・自由・平等・友愛・人道という五つの基本原則があります。フランス革命が勃発して以来、この五つの基本原則を求めて発展してきたかのようです。
1789年に採択された「人間と市民の権利の宣言」のなかにもフリーメイソンの理念に基づいているかのような文面を見ることができます。現代政治は自由と平等、民主主義と人権という理念を基礎として発達しています。
フランス人権宣言にはフリーメイソンの理念が織り交ぜられている
現代社会はフリーメイソン理念と密接な関係を持って発達してきたのです。自由と平等、民主主義と人権の発達は歴史的必然と考える人もいるかもしれませんが、実際は秘密結社フリーメイソンの理念に沿う形で政治が行われることに進歩という名前が付与されているとみるのが真実に近いのです。
都市伝説とフリーメイソン
しばしば世界はフリーメイソンによって裏で支配されていると言われています。このような考えを現代では一般的には都市伝説という括りで論じられています。フリーメイソンに関するいわゆる都市伝説は、様々な著作や雑誌などでも見ることができますし、テレビメディアなどでも目にすることができます。
フリーメイソンの陰謀に関する著作は近年多数出版されている
最近はフリーメイソンの関係者がフリーメイソンの都市伝説なるものを語るような時代になっています。フリーメイソンが世界支配の陰謀を企てているという陰謀論は現在でも日本のみならず世界中で語られ続けています。
このような陰謀論の歴史は決して最近になって始まったものではなく、1789年に始まったフランス革命の勃発とほぼ時を同じくして語られだしたものだという事実について、私たちは認識しておくべきでしょう。フリーメイソンによる陰謀というのは200年以上にわたって語られ続けてきたものです。
フリーメイソンとユダヤ人コミュニティとの関係性も、様々な形で議論されてきました。フランス革命の結果、ユダヤ人が市民権を得たことなどもその理由に挙げられます。
日本でも20世紀前半に、フリーメイソンとユダヤ人との関わりを指摘する著作が多数出版されています。1923年に日本で出版されたオーストリアの政治家フリードリッヒ・ヴィクトルの『フリーメイソンと世界革命』などが翻訳されています。
初期のフリーメイソンにおいてユダヤ人の地位はそれほど高いものではありませんでしたが、ヨーロッパが第一次世界大戦で混乱を極めていた頃には既にフリーメイソンにおけるユダヤ人の地位は非常に大きなものとなっていたと言われていました。
戦後日本ではほぼ黙殺されてきましたが、少なくとも大日本帝国時代の日本ではそのように認識されていたことは間違いありません。
フリーメイソンの陰謀論の多くには必ずと言ってよいほどに悪魔という概念が登場します。19世紀には欧米でフリーメイソンが黒ミサを行い、悪魔崇拝を行っているとする告発が多数寄せられました。
アメリカではウィリアム・モーガンがフリーメイソンの秘密を暴露する本を出版する意向を発表した後に失踪しました。これによりアメリカでは反メイソン党という政党ができたほどでした。
失踪したウィリアム・モーガン
フランスではレオ・タクシルが『フリーメイソンの秘密』のなかで悪魔崇拝、ルシフェリアニズムを告発しています。同じくフランスのアベル・ラ・レヴィをはじめ多くの人々によって告発されています。
レオ・タクシル 1854ー1907
フリーメイソンやフリーメイソンの擁護者たちはこのような事実はないとし、これらの告発をデマであると主張しています。また、パリの新聞にタクシルがかつての告発をデマであったと告白しています。この告白の翌年に、タクシルは亡くなりました。
私たちはこのような告発やその批判が事実として存在していたと認識したうえで、テレビ、雑誌、著書などによりフリーメイソンに関する都市伝説が作られているということを理解する必要があります。
都市伝説批判と日本での活動
フリーメイソン陰謀論には多くの批判があります。最も重要だと思われる批判は、一般的なフリーメイソンの会員は、慈善事業を行っている普通の善良な人たちであるというものです。
フリーメイソンは実際に社会奉仕活動を行っています。イギリスの軍人ロバート・ベーデン・ハウエルによって始められたボーイスカウトもフリーメイソンの影響を受けて世界中に広まった活動の一つです。
スカウトはスカウト教育法によって、神への義務、他者への義務、自己への義務を達成するために様々なプログラムを用意し、青少年の育成を行っています。
ロータリークラブやライオンズクラブといった活動もフリーメイソンから派生した活動だと言われています。
このためフリーメイソンの陰謀と呼ばれるものは、実際にはメイソンの一部の勢力によってなされているものだという主張があります。その一つがフリーメイソンと共に陰謀論に頻繁に登場する秘密結社イルミナティです。
日本では黒船来航よりも前に既に江戸時代にはフリーメイソンが活動していたとも言われています。幕末から明治にかけて多くのメイソンが日本に訪れ、横浜などにロッジを設立して集会を開いていました。
築地で神学校の校長を務めていたフランス人のフランソワ・リギョール神父は、1900年にその著作『秘密結社』の中で、フリーメイソンが陰謀を企てていることを指摘しています。この著作を皮切りに大日本帝国時代には多くのフリーメイソンの陰謀にかんする著作が書かれました。
築地の進学校の校長を務めたフランスの神父フランソワ・リギョール
戦後になって1980年代になって東京タワーがある芝公園4丁目内にメイソニック38MTビルと39MTビルという建物が建てられました。日本グランドロッジも同じ区画内にある東京メソニックセンターにあります。
東京タワーのすぐ近くにある東京メソニックセンター
まとめ
フリーメイソンについて言及するにはこれだけでは足りませんが、このような情報を前提として、例えばアメリカの独立戦争やフランス革命、国際労働者組織、ロシア革命など、フリーメイソンが関わったとされる様々な歴史的な出来事を捉える上でも、フリーメイソンについての大まかな全体像をとらえる必要があるのではないかと思います。フリーメイソンには非常に多くの伝説がありますが、ここでは主要なものだけに限り紹介することにしました。
非常に拙い文章で申し訳ありませんが、こういった情報を共有することで、また新しい情報収集や分析に役立つのであればと思っています。
さいごの一言
最後までお付き合いいただきありがとうございました。ご感想などありましたら、気軽にコメントください。