「いつかの岸辺に跳ねていく」
加納朋子
幼なじみの徹子と護
かなり風変わりな徹子を、やや呆れながらもそばで見守ってきた護
実は徹子には、誰にも言えない秘密があった

ラブストーリー大河
と、いってもいいでしょう!
ふたりが中学生から大人になるまで
前半の「フラット」の章では護目線で
大人しくてクールだけどときどき突拍子もない行動をとる徹子を
ちょっと不思議ちゃんな女の子として見守っている
「恋ではない」「恋愛としてのタイプからは逸れる」としながらも
深いところで想い合うふたりの絆が暖かい
と、思われたが
その絆が突如断ち切られる形で「フラット」の章が終わる
続く「レリーフ」の章は徹子目線で
徹子がだれにも言えなかった秘密があかされます
ネタバレしますと、
徹子には、未来予知の能力があり、
しかもどちらかというと悪い未来を予知しやすく
それにずっと苦しんでいました
徹子は、誰かの不幸な未来が見えていたのに
それを阻止できなかった自分に罪悪感を抱いています
それでもなんとか誰かを救おうと試行錯誤した結果の行動が
普通の人には理解できない「不思議ちゃん」と見えていたわけです
しかし私にはこの、徹子が常に抱える罪悪感
不思議な能力だけのせいではないって思いましたね
話の大筋からはズレますけど、
徹子の母親ってズバリ微毒親
徹子より弟のほうをかわいがっていて、
徹子にお金を使うより弟に使いたいと思っている
そのわりに、徹子の学歴で見栄を張りたがったり
成人式の着物で見栄を張りたがったりして
徹子がどっちを選択したとしても結局文句を言う未来なんである
こりゃ病むよね😩
そんな徹子にとって、
ストレートで誠実な護は救いの存在であり、
護といるときだけは、心は不吉な未来でなく懐かしい過去へ跳ねていくような気がするのだった
しかし、後半の「レリーフ」の章はほとんどすべて
徹子はこれからは起こる最大の不幸を回避すべく、ずっと苦しんでいます
徹子にとって、とても大切な人たちを守るための戦い
そのラストバトルに、徹子にとっても大切だった護との絆を捨ててまで立ち向かいます
この戦い、どう終結するのか不安になりましたが
自分にしかない特殊な能力を持ち
それを誰にも話さず一人で戦ってきた徹子は
ここに至るまで
変えようとした運命、変えられなかった運命の中でもたくさんの味方ができていました
そんな味方たちが徹子に加勢します
はじめに、この物語はラブストーリー大河だと書いたんですが
それはラストまで読んで感じたことです
徹子がどうして護といると過去を想うのか
その理由が明かされます
未来から過去に遡って、ふたりはお互いを守りあってきたことが最後にわかるのです
加納朋子作品をひさしぶりに読みましたが
暖かくて美しい
