「リビング」
重松清
コレの続きです

最終話
「モッちん最後の一日」
春休み最後の一日、モッちんは友達みんなに会うことにした
今までのモッちんを知ってる友達に
最後に「モッちん」と呼んでもらうのだ
明日からは中学生。
モッちんの両親は離婚し、モッちんは望月という苗字ではなくなる

この短編集ではダントツにこのお話が好きだ
もちろんこのお話も25年前のものだけど
他のお話でたまに鼻についた違和感というか
「男は好き勝手ないきもの」
「女はそれを耐えるいきもの」
みたいな古い役割のおしつけ?みたいなものを感じなかったからかも
言い換えれば、オトナの都合でコドモが振り回されるのは
今も昔もまだアップデートされていないということなのか
主人公は中学生になる直前の少年
モッちんはもちろんまだコドモだが、
まわりが見えないほど幼いわけでもなく
お父さんはお父さん
お母さんはお母さんの事情があって
どうしようもなく、モッちんのなすすべなく
環境が、家族が変わってしまうんだということを
なんとか受け入れようとしている
子供は生まれてくる家庭も苗字も選べない
だけど成長に従って、そこに確かにアイデンティティが結びつく
それが、自分には計り知れない理由で
ある日根幹から揺るがされる
それでも、なるべく重苦しくなく
悲しい気持ちにならないよう
友達の前で明るくはしゃいで返事をして
新しい苗字の新しいアダ名を考えることで
モッちんはこの状況に折り合いをつけようとする
離婚理由を子供にひた隠しにする両親もいるけど
それって必ずしも正解なのかね?
なんとか隠そうとしても、コドモにはある程度バレてると思う
せまい家庭での話だもの
子供はどうせ巻き込まれるしかないのなら、
せめて経緯は説明するというのもひとつの誠意じゃないかという気もする
ただ、そんな訴えを両親にぶつけることもせず
むしろモッちんは両親を励ます
モッちんの賢さと勇敢さ、優しさが切ない
モッちんが最後に名前を呼んで欲しかった人
その箇所を読んだ時
切ないけどたぶんモッちんは大丈夫だと思った
家も家族も大事だけど
外の世界にも大事な物はあることを知っている
親にも誰にも、ひっくり返されない自分だけの世界があることを知ってる
うまくいえないけど、大人になって外の世界に踏み出す準備は整ったというか
彼女とか仲間とかできて新しい苗字でも世界が広がっていくだろうなという明るい感じがした