カソウスキの行方
津村記久子
「カソウスキの行方」


後輩と上司の不倫トラブルになぜか巻き込まれ
望まぬかたちで本社からこの「倉庫」へ「飛ばされた」女子社員イリエ

よりどころとしていた女友達も結婚してしまい、
先の見えないモヤモヤする冴えない毎日をすこしでも盛り上げるために
イリエは、同じく冴えない同僚の森川を
「好きになったと仮想する」ことに決めた




この表題作を含め、みっつのお話が収録されているんですが


あれ?これはもしかして恋愛小説集なのかな?

と、途中で思いました



私がこれまで読んだ津村記久子の作品で

恋愛でドロドロの真っ只中とか、

ラブラブで幸せハッピーみたいなことを前面に押し出してる作品は

思い当たらない



これ、好きなの?違うか、勘繰りすぎか

あ、でもこのふたりやっぱりイイ感じ?

と、読みながら途中で勝手に「これは恋愛でしょ」と断定する感じで

それが正しいかはわかりません



たとえばこの作品も




そして、この「カソウスキの行方」も
カソウスキ=仮想好き
で、恋愛してるふりしてちょっとでもテンションあげようみたいな話なんたけど


なんていうのこの、
回りくどさというか、まだるっこしさというか
ツンデレの100歩手前の感じ


なんかめっちゃわかる気づき


身に覚えがあるからあえて的外れを怖れずに断言するけど

「カソウスキ」してる時点で
もうけっこう好きだよね!


それを自分で認めるのにものすごく時間がかかるタイプではないですか?


いや、この小説では違うのかも知らんが
私がそうなので…


私、あ、恋したかも?と思ったら
まず否定からはいる!


いやいや恋とかじゃえねえし!
は?恋?きっも!
みたいな笑


それが一歩進んだら

まあ、恋?っていうことにしておいてあげてもいいけど?
ホントは違うんだからねっ!



みたいな感覚になるんですが
それがちょっとこの「カソウスキ」と似てるように思いましたニコニコ


イリエと森川の「カソウスキ」状態は
進展するようでそうでもなく、
かと言ってなにも無いともいえないんじゃないかという感じで続き
ある日終わりを告げる



もちろん、それがキッカケで簡単に仮想好きが現実の恋愛になったりはしないところもめちゃ共感

そうなのよ!
最後だからって簡単に告白したりできるならそれはもうカソウスキじゃないのよ


イリエが森川に最後に送ったメール


これまでの森川に対する「カソウスキ」のことも素直に打ち明けるんですが
てことは、素直に想いを伝えるの?
と、思うところですが


そんなわけないんだよねー!


それどころか、書かなくてもいいド下ネタとかいれまくりで
イリエなにやってんだよっ!
と、ツッコミを入れたくなりますが


しかしこの気持ちもなんだかわかる


本当に書きたいことは、たぶん3行で済むんだけど
その3行のために、いろんな余計なことを書かずにはいられない



それに対し、最後のページで森川から返信が来ます
あんなしっちゃかめっちゃかのドン引きメールにも関わらず…


適当な異性が他にいないからという理由で選んだ「カソウスキ」の相手だが
森川、適任だったのでは…



少なくとも森川は、イリエのメールの真意を読み取ったように思う
森川の返信もまた微妙にヘンテコだから定かではないけど。


真意を読み取るって、伝える側だけでなく受ける側の気持ちも重要だと思う


しかし、このあと二人がどうなるのか
案外そのままただの友人のままのような感じもなくはない





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