「ポースケ」
津村記久子

コレの続きです下差し
「コップと意思力」

「ハタナカ」の常連客、ゆきえは
かなり不器用で

仕事は苦痛ではないが家事や料理の類が一切できない


仕事は忙しいし、
モラハラの元カレはストーカー化するし
過干渉気味だがたまに食事を恵んでくれる母親は骨折で入院するし、
彼氏のぼんちゃんは優しいが生活の助けにはならないし…

日々の生活に煩わされるゆきえだが…



ゆきえの彼氏、ぼんちゃんは

しつこい元カレを追い払ったりもしないし、

家事や食事に困るゆきえの世話をしてくれるでもない

もちろん、経済的に支えるということもない



だけど、ぼんちゃんの何が良いかといえばそれはやはり

ゆきえをなにか別のものに変えようとしないところだろう



ぼんちゃんは

ゆきえの母親が入院したと聞いても「千羽鶴折ろか?」とか言うし

料理をまったくしないゆきえに、レトルト食品のお得な通販サイトのリンクをメールしてくる



でも、ゆきえの否定ばかりしていたモラハラ元カレよりも
ゆきえに料理を覚えるべきだとせっつく母親よりも
一緒にいて居心地が良いのではないだろうか


その人のなにかを変えようとすることは、
現在のその人を否定しているのとある意味同じである


人は否定されながら、良い方に変わっていくのは難しいような気がする


ありのままの自分を受け容れられた実感があって初めて
自発的に新しい自分に出会いたいと思うのかもしれない


料理なんてもってのほかだと思っていたゆきえが、レシピを知りたいと思ったり、
大事な本の保管を最優先で暮らしてきたぼんちゃんがゆきえと同棲したいと思ったり


ほわーっと暖かくなるような幸せ感のあるラストだった