「騙し絵の牙」

塩田武士

 

 

出版大手の薫風社で雑誌「トリニティ」の編集長を務める速水


出版不況の時代


なんとか我が雑誌を

出版を

小説を

守るためひそかに奔走する



先日、映画版を観たので原作読んでみました




え。ええーびっくり


原作と映画ぜんぜん違うよ!?



カリスマ社長が死んでお家騒なんてハナシまっったく無いし!!

KIBAプロジェクトってなんだったんだ!?

中村倫也の役いないし!



そして、この小説版こそが

「主演の大泉洋の当て書き」とのことでそこばかり注目してしまったんだが



大泉洋っぽさでいうなら圧倒的に映画版のほうが大泉洋(?)




小説版の速水は部下の高野(映画版でいうところの松岡茉優!)と不倫してるし

ちとネタバレになるが、速水はもともと関西にルーツのある人間ということがわかります



大泉洋に関西弁の役のイメージがないし、

生々しい男女関係を演じてるイメージがない



まあ私は、大泉洋の超マニアックファンじゃなくて

たまたま出演作を観るくらいのライトな視聴者なんでねおいで


映画版の速水はまさに、「ライト視聴者の大泉洋像をバッチリ捉えている」と思った


女性にも親しみやすいコミカルなキャラだが、

恋愛モードのイメージは薄い




小説版では、

「水曜どうでしょう」でやってたようなモノマネを速水が披露する下りもあったりして 

たしかに大泉洋の当て書きだとありありとわかる



そして、表紙・裏表紙・各章の扉絵

すべてに大泉洋の写真が使われるという徹底ぶりなんだが



小説版を読み進めるにあたって速水=大泉洋というイメージは逆に邪魔に感じた

ていうか大泉洋の写真が多すぎてチョット…滝汗もういい



そんな感じで1回目を読み終わりは、映画版からの違和感だけであったが



2回目を読むうちに、だんだんとこの小説のおもしろさがわかってきたように思います




ほとんどずっと速水は誰かと会合し、自身の雑誌「トリニティ」存続のため

あれこれ手を回したり取引きしたりしています



そのためには、家族すらもないがしろにして

最終的には家庭も失います



そこまでしたのに社内抗争に敗れ、速水は薫風社を去るのですが



そこから一転!

速水の鮮やかな逆転劇が始まります

まるでこの日がくることをはじめから知っていたかのように



私は、ここまで準備万端だったのなら

どうしてこれまで速水が「薫風社」の「雑誌編集長」にしがみついていたのか

逆に不思議になりました


薫風社なんてさっさとひっくり返せば良かったのに。




物語の最後になり、やっと速水のルーツが明かされ

その理由がわかりました



どうしても「薫風社」の「編集者」でいなければいけなかった

それは、速水の過去に結び付く信念だった



映画版の高野が、

自己のルーツともいえる実家の書店と、愛する小説を守るために一発逆転をしたのと少し通ずる




飄々としていて本心が掴めないのに、

狙ったものはなんとしても手に入れる底知れ無さがある速水だが


意外と泥臭い不器用な人間なのではないか



娘を愛してると言うわりに家庭を顧みず不倫までして

速水ってちょっとバカじゃないのと思ったが



家庭を大事にする方法すらよくわからなかったのではないか


そう思うと速水という男のアンバランスさが切ない




というわけで、

小説版もおもしろかった!



ただ心残りなのは


映画版の高野(松岡茉優)は純粋に小説と書店を愛する一本気な女性なのだが


小説版の、したかたあざとい小悪魔バージョンでの松岡茉優さんを観てみたかった!






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