「何様」
朝井リョウ


 


小説「何者」の登場人物とその周辺の人たちのアナザーストーリー



「何者」はすでに読了していますが




今回、「何様」を読むにあたって

もう一度「何者」を見返しなから読みました。


そうすると、「何者」では見えなかった一面が見えてきたり…




1話目

「水曜日の南階段はきれい」


高3の光太郎は、御山大に絶対合格し、そこの音楽サークルでバンドをやると公言している


そんな受験生の日々

光太郎は密かにある人の存在が気になっている


英語の成績がズバ抜けて良くて、水曜日になると南階段を掃除をしている夕子。




「何者」では、主人公拓人のお調子者の友人で

もちろん宣言通り御山大の音楽サークルでバンドをやり、


就職活動もヘラヘラしながらそこそこうまいことこなす

よく言えば天真爛漫、悪く言えば鼻持ちならない光太郎



だが、この短編を読むと少し印象が違った

もちろん、明るくて騒がしいのは同じなのだが



実はまわりを注意深く観察していたり

まわりのノリと自分とのズレを繊細に感じ取っていたりと

ナイーブな一面が見える



そして、まわりに公言して憚らない

「御山大でバンドやってミュージシャンになる」という自分の夢にさえ

内心疑問を抱いている



本当は気づいている

「何者」にもならずに大人になるだろう自分を



だからこそ、自分の内側だけに秘めた強固な夢を貫く夕子を眩しく感じている

夕子の夢だけが本物なのだと引け目を感じている



私は、貫き通す夕子の夢も

人生の曲がり角で行き先を変えるかもしれない光太郎の夢も、

どちらも嘘だとは思わない



光太郎、「何者」ではけっこうイラつくタイプだと思ってたんだが笑

この短編は清らかで、ちょっと光太郎を好きになれました