「何者」
朝井リョウ

 

 

就職活動をする大学生たち


ミュージシャンも、劇作家も、アートクリエイターも、インフルエンサーも

嫌でも現実のタイムリミットが見えてくる


彼らはその先を超えるのか?超えないのか?



超超超おもしろかった〜

ほぼイッキ読み!!



今さらすぎるけど(2012年発表)

どうして今まで読まなかったんだろ!




登場人物それぞれのTwitter(いまはxな)の呟きが

文中に頻繁に差し挟まれ



大学生たちの膨大な自意識をこれでもかと効果的に表現していて

身震いするほど好き



自由なようで囚われてる人も

クールなようで臆病な人も

大言壮語な人も

聡明なようで愚かな人も



他人のアラは残酷なくらいよく見えるのに

自分の矛盾には気づかない


本人たちはとにかく必死だから



それが強烈な皮肉とともに描かれるのに

途中からだんだん愛おしくすらなってくるのは



半径三メートル以内で生きる「何者」の時期を

シビアに表現しつつも、どこか暖かいからだろうか




そして、私自身にも「何者」になれるかもと思った時期があったからかも



私の通っていた大学はわりと専門的で、

卒業後に、とある国家試験をほぼ全員受けます



その国家試験に受かるためだけの大学生活と言っても良い


学生は、ほぼ全員

職種は多少違えど、その資格ありきで仕事を選びます



つまり、大学入学の時点で、将来の仕事はある程度決まっているはず



なのに


そんな私でさえ

「何者」になれるかもと思っていた時期があるのです



国家試験のための大学生活を送りながら


どこかで、資格なんて必要ない

もっと私自身の「資質」が求められる「何者」になれるんじゃないかと



実際は、資格試験にすら四苦八苦でなんとか合格し

当然のことながらその資格頼みで就職



そして、新入社員なんてものはだいたいどの仕事でも

資格だとか専門性なんかはあまり関係ない


片付けや準備なんかの雑用から覚える毎日ですよね



そのとき思った

あ、たぶんわたし「何者」にもなれない。



コピー用紙や、みんなが使う輪ゴムなんかを毎日補充して、

それが上達したら


専門の仕事をさせてもらえるかもしれないが


それも結局すべて

この箱の中だけのこと。


どこにも羽ばたいていくことは今後ないだろう


そう受け入れたように思う



それから約二十年が過ぎ、おおむねその予測通りの人生です



だけど

「何者」にもなれなかったけど、「自分」にはなれたように思う



自分なんてはじめから自分じゃんと思うかもしれないが

私には時間のかかることでした



ただの加齢で考えが緩くなったともいえますが

今の自分がけっこう好きです

真顔キライなときも結構あるよ



「何者」になれるかもと思ってた頃の自分には

少し申し訳なく思っています




 

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