「ディス・イズ・ザ・デイ」
津村記久子

コレの続きです下差し
「眼鏡の町の漂着」

出てくるチーム
鯖江アザレアSC✕倉敷FC


核となる人間関係
恋人の行方を追う香里と、ある選手を長年見守っている誠一

好きな一文
「自分は自分の時間が進むことを許してもいいのだ」




この物語の香里と誠一は、お互いほとんど面識はありません


突然音信不通になった恋人を探して

恋人といっしょに観戦していた鯖江の試合に通う香里と



もう二十年以上も野上という選手を追っている誠一


ふたりに共通するのは
「最初のきっかけを失ったとしても、いま自分が好きなものを好きと思えるか」
というところだと思う


香里は、せめて恋人からの別れの言葉でもいいから区切りが欲しくて鯖江の試合に通っている

誠一は、野上選手が今は消滅してしまったトップリーグに居た頃からのファンで
野上の移籍に伴い倉敷FCのサポーターになったが、
当の野上には引退説が持ち上がっている


恋人と別れ話ができたら、鯖江のサポーターはやめるのか?
野上が引退したら、倉敷のサポーターはやめるのか?


生きていると、不意に失ってしまうものや、
そのあと、取り戻せないものもある


それに執着している間は
自分だけ時が止まっているかのように感じるが、

正確にはそうではなく、その間に自分も変化をしているのだと思う

なにかを失って、それに執着したからこその変化だとしても
その変化はなにかに奪われることはない完全に自分のものだ


たとえ不意に、その執着を手放したとしても
自分がした変化はなくならない


過去に捕らわれたまま抜け出しきれなかった登場人物が、
ふいに自分の新しい一歩を踏み出すことを選んだラストが良かった