「ままならないから私とあなた」
朝井リョウ

コレの続きです下差し
表題作
「ままならないから私とあなた」

雪子と薫は幼馴染の大親友


無意味と思ったら例え授業でも平気でサボるのに、
意味があると思うことには素晴らしい能力を発揮する薫

雪子は、苦手なことも、よくわからない相手の気持ちも、
無理かもしれない夢も
不安や迷う気持ちも、無駄なことだとはなぜだか思えない

そんな二人が大人になるまでのお話




雪子は、うまくいかないことやモヤモヤする気持ちを

少しずつでも自分が良いと思うほうに向かって努力するタイプ

そして、その過程で得た経験や気持ちにも価値があると思うタイプ



対して薫は、

できないことや不確定なこと、無駄なことはムリにしなくていい!

わざわざ出向いたり、順番待ちをする意味がわからない

「経験」よりも、「実績」を重視するタイプ



たとえば、ふたりでお気に入りのアーティストのライブに行くんですが

雪子は、「会場まで出かけて、生で観られて良かった!」って思うタイプで

薫は、「これがオンラインで世界中の人に一斉に体感できたらもっといいのに!」

って思うタイプ



わたし、意外と両方に共感できましたニコニコ



とはいえ薫は超天才なので、普通はこんなふうに切り捨てて生きられませんけどね


私もどちらかというと雪子タイプ



だけど、どうしてもできないことをどうしてもする必要あるのかなって思うこともあるし

別の方法でも良くない?って



薫の考えなら、

たとえば学校に行けない子や家から出られない人も学びや経験の幅が広がるなと思った



だけどね、薫はそのうち

「出来る人のメソッドを完全コピーして脳に直接データを伝播すれば、

みんなが同じメソッドを得られるよね♪」

的な発明をしはじめるんです



え?それはさすがに危険思想なような…滝汗



雪子は幼い頃からピアノで作曲する特技があるんですが



そんな雪子も、薫の発明には

技や作品にその人ならではの個性や癖があって、

それこそが「その人である」っていう証明じゃないか?

と、反発を覚えます



そーだそーだ

薫の発明って、AIに乗っ取られた未来みたいな話だぞ!

って私も思ったんですけど



薫はそんな考えをせせら笑う

「車もエアコンも、スマホも、便利なモノはとっくに依存してるくせに

自分の立場を脅かしそうな技術だけは否定するの?」




うーーん

たしかにソレな!



人よりヘタな部分こそが私なの?

それとも、

人より優れている部分こそが私なの?



だから、

みんなが同じように上手くできるようになる技術は否定するの?




だけどひとつ確実にいえるのは

やっぱり人生は、
思い通りにいかないことや、予想外のことが起きるものだということ

 
物語の最後、
結局ふたりの結論は出ないまま
ひとつの「予想外」が起こります


その時点では
ハッピーともアンハッピーともいえない出来事


でもそれを、自分ならではのやり方で
自分ならではの「ハッピー」にもっていこうとする


それこそが人間
それこそが私、なのかもしれない