「神様のケーキを頬ばるまで」
彩瀬まる

コレの続きです下差し

第三話
「龍を見送る」


古書店に勤めながら、音楽の配信者をしている朝海
公私ともにパートナーの哲平と、バンドを組んでいる

しかし最近哲平は、他の配信者と組んで曲を発表した
その歌声は、朝海の曲には無い魅力があった

哲平は、朝海のバンドを抜けたいと申し出た



朝海が作詞作曲をし

アルバムのコンセプトを全て決め


哲平はそれを忠実に表現する



お互いの良さを最大限に生かした役割分担だったはずのそれが

いつしか「主従関係」のようになっている



朝海はいつしかその主従関係に依存していたように思う



自分の完璧な作品の真ん中にある、完璧な踊り子人形としての哲平

それを愛し執着していた



だけど、哲平は生身の人間で

朝海のアイデアではなく、自分の思うように表現したいと考えるようになる



朝海の世界に哲平を閉じ込めることは

もしかしたら、二人にとって意外と居心地の良い状態かもしれない

だけど確実に、二人とも遠くない未来に消耗しきって枯渇するだろう




半身をもぎとられるような想いで、なにかを捨てる

でも、そうしなければ新しい世界は得られない
そういうことは時としてある


朝海が哲平を手離したことで
また新たな創作のインスピレーションが得られたような
すこし希望の見えるラストだった