体調を崩した母のために
東京から実家の茨城にもどってきた32歳の都
そこで出会った寿司屋の貫一とひょんなことから恋に落ちて…
なにを優先して生きるか?なにを選んで生きるか?
どんな幸せを選ぶのか?
人生の究極の問題を突きつけられる長編

2021年に逝去した山本文緒の最後の長編作品
まだ読んでいなかった私ですが、最近ではむしろ読むのが怖くて
これを読んだら終わってしまう
そう思ってしまったから
だけど読んでみて
やっぱり良かった
最後の長編とか作者が亡くなってしまったからとか関係なく
むしろ
私にとってはじめての山本文緒作品
「みんないってしまう」を読んだ時とまんま同じ楽しさがあったから
ワクワクして、そのうちガーーン!!ってなって
どんどんゾーーっとしてそれでも目が離せなくて
最後には、それでも生きてくしかないんだ!
って思う
「ばにらさま」のときも同じようなことを書きましたが
はじまりは、
そこそこお気楽で、オシャレな何の変哲もない女のコの毎日
(山本文緒作品の主人公って、オシャレな女の子が多い気がする)
もちろん毎日ちょっとした不満はあるけど
たとえばオセロに例えるなら
盤上は、だいたい幸せなピンク
ところどころ、ちょっと不満なグレーが混ざってるって感じ
だけど、読み進めて物語が見えてくるうちに
ぱたり…ぱたり…と、
ピンクのオセロがグレーにひっくり返って
気づいたら、どこもかしこも逃げ場のないくらいグレーじゃん!
って愕然とする
しかも、そのグレーも
「隕石が落ちてくる」とか「海賊に攫われる」とか突拍子もない不幸じゃなくて
それこそ、ピンク色の幸福と地続きなグレー
ありふれた悩みや苦悩
え…そのグレー、わたしも知ってるやつだ…って
ゾッとしてくる
私のオセロも、見ないようにしてるだけで、
もしかしてこんなにグレーだらけなのかな…?
どんなことも、どんな人も
いい面しかないモノなんてなくて、
良いところも悪いところも
それこそオセロみたく表裏一体なんだよね
たとえば、都が付き合う恋人の貫一も
飾らなく優しく暖かい人柄ではあるが
そのいっぽうで
考えが足らない、気持ちが底知れない、将来性に乏しい
そんな欠点もある
タイトルの「自転しながら公転する」の意味は、わりと序盤で明かされる
恋愛だけでなく、
仕事も住む場所も、家族のことも、
私達は気が遠くなるほどの選択肢を日々つきつけられている
ものごとの表裏をちゃんと把握して
最良のタイミングで最良の選択をし続けるなんて
とても無理だよね
それこそ、今この瞬間もすごいスピードで
自転しながら公転もする地球みたいなものだよねという意味
うう…この感覚、すごいわかる
今はうまくいったと思っても、次の瞬間にはヘタうって
不正解選び続けるかもしれないという恐怖
意識してなかったオセロがまたひとつ、グレーに裏返ったような気がした
感想が書ききれないので一度終わります