「炎上する君」
西加奈子

コレの続きです下差し
最終話
「ある風船の落下」



世界中で、「風船病」なるものが流行りだした
ストレスが高じて、体が膨張し
いつしか風船のように空中に浮かんでしまう

さらに病状が進行すると
患者は、猛烈な勢いで空のかなたに飛ばされていく


主人公もとうとう大空に飛び出した。
 
空にはたくさんの、同じ風船病患者が浮かんでいる
 
もう二度と、地上に堕ちることのないように
彼らはお互い触れ合わないよう最大限気を使っている





地上には苦悩がいっぱい

摩擦や軋轢や、傷つくことがたくさん



だけど大空では逆に
誰かと触れ合ってはならない
なにがあっても、どんな相手でも
一定以上近づかないように警戒しつづけなければいけない


どちらも結局つらい
それならば、私はどちらを選ぶだろう


どちらが良いとか悪いではないのかもしれない


だけど、この理不尽で混沌として雑然とした地上で
地面を這い回って
大切ななにかを探したり捕まえたりまたなくしたり


それをいちいち喜んだり泣いたり悔しがったりして
それでもまた命をただ意味もなくぼうぼうと燃やしながら生きるのも
また本能だと思った


本能なのだから、無意味でも当たり前なのだろう