「炎上する君」
西加奈子
恋い焦がれ、舞い上がり、もがき苦しむ人たちの短編集
第一話
「太陽の上」
「太陽」という中華料理屋の上にアパートがある。
「太陽」の主人もその妻も、アルバイトの男たちも
そして「太陽」の上のアパートにひきこもりになっている私も
それぞれのやり方で「太陽」を愛していた

全編読み終えて、この作品はとても感想文が書きやすいと思った
単純に好みだからというのもあるし
「このお話を読んで一番伝えたい感想は?」が
すぐにズバッ!と出てくる
それは作者の意図とは違うのかもしれませんが
私が一番どんなことを思ったのがすごく明確
「太陽」の夫婦は
妻が主人に焦がれるあまり、店のアルバイトに手を出していて
主人もそれを黙認している
その様子をひたすら伺う「私」は
三年前から、他人と関わって生きることやそれに不随する些末な努力をすべてあきらめ
引きこもって生活している
生きることは
特に誰かと(ときには自分すらも)関わって生きることは
思い通りにはいかない
一筋縄ではない
シンプルなようでシンプルではない
理由が説明できることばかりではない
ときには、卑屈で浅ましくすらある
それでも、太陽の下へ自ら這い出て
手につかみ取ったなにかをがつがつと摂取しながら
生きたいという本能は消えない
それは、本能と欲望の結果生まれた宿命なのかもしれない