おまじない
西加奈子

下差しコレの続きです


「ドラゴン・スープレックス」




中学生のジュエル(樹絵瑠)は、ひいおばあちゃんに育てられた


ママはほとんど帰ってこないし
会ったこともないパパはアフリカ系。
だからジュエルの見た目も日本人とだいぶ違う。


ママのママ、おばあちゃんは主張の強い活動家の女性。


ひいおばあちゃんは信心深い。
ママのことも、おばあちゃんのことも、「あかんもんついた」と嘆きながらおまじないを唱える。

ジュエルのことも、「よしえ」と呼ぶ



ひいおばあちゃんが亡くなって、ママとママの彼氏と住むことになったジュエル

ひいおばあちゃんに「よしえ」として育てられた部分が
どんどん変化していくような気がするジュエルは…







「お前がお前やと思うお前が、そのお前だけが、お前やねん」


上差しこのセリフ
私はあまり、本文の引用はしないようにしてるんですが…


このセリフだけはどうしても引用してしまいました。
これだけ読んでも良く意味がわからないと思いますが

本当はもっと長いセリフでして、
これ以上に表現できる言葉はないのです。


周囲と違うルーツ、見た目を持つこと。
近くにいる大人の、個性や主張がバラバラでなおかつ強すぎること。
そしてそれらを、自分もモロに影響をうけること。


ジュエルのような幼い少女なら、
自分とはどういうものかわからなくなってしまうだろう。



ひいおばあちゃんに育てられた「よしえ」が「ジュエル」に変わっていくことが
ひいおばあちゃんを裏切っているような気分になったり


おばあちゃんの影響でコーラを毒だと思ったり。
逆に、ママの影響で自堕落に生きたり




本当は、すべて自分で選んでよくて、
いらないと思ったおまじないは捨てていいんだよと

前述のセリフは、直接心に響く形でジュエルを解放させてくれます