江の島ねこもり食堂
名取佐和子
江の島にある民宿「半分亭」
店主の一家、佐宗家の娘たちは代々、
「島の猫たちと通じ合える」という不思議な力を受け継いでいる
食堂を守りながら、島の猫たちのお世話をする
それが、「ねこもり」さんの使命
猫とお客さんに助けられている「半分亭」と、
不思議な宿命を背負った女たちの100年の物語

この表紙みて、どんな話だと思いました?
江の島の綺麗な景色と、
お客さんとの交流と、
おいしそうな料理と、
猫のかわいさみたいな
そんなホッコリ物語だと思いませんか?私は思いました
読んでみると、想像とはだいぶ違いました
体が弱いという運命を背負った女性
友達との別れを生涯忘れなかった少女
どうしても広い世界が見たいと苦悩する女性
家族が借金を抱え、大切なものを手放すことになった少女
いつの「ねこもり」たちも、厳しい現実に翻弄されています
そんなとき、彼女たちと通じ合えるという島の猫たちは
特になにもしてくれません。
少なくとも、みてわかることは何も
ただ、呼べばわんさかと集まり
彼女たちに呼応するように鳴く
江の島に、あたりまえのようにいる猫たち
目に見えることはなにもなくても、
きっと猫が彼女たちを守っているのだろう
それぞれの時代の佐宗家の女たちが、
過酷な人生のなか、なんとか繋いだ縁が
長い時を経て意外な形で実をむすびます
ただのホッコリ、ご都合主義のストーリーよりも
じんわりと暖かくなるようなラストでした