「さいはての家」
彩瀬まる

コレの続きです下差し

「ひかり」

 
古い平屋に移り住んだ老女
庭でハーブを育て
「杣鳥(そまどり)健康教室」を始める


彼女はかつて、新興宗教の教祖であった

修行中の「とある事故」から
居場所を追われ、この家に辿り着いた




老女には確かに、

相手の気持ちや感覚にシンクロする能力が人一倍あった


そまどり先生、と老女は呼ばれているが

それは彼女の本名ではない


もはや老女は、自分の本名すら思い出せなくなっている



それこそが、

彼女が今まで気が遠くなるほどの多くの女たちに

シンクロして共鳴してきた証拠ではないだろうか


もはや他人と自分との境目すら曖昧になっている



確かに、はじめはその力で

自分以外の誰かを救いたいという気持ちだった



いつしかすこしずつ

「自分はもっと超越したなにかでありたい」という欲が混ざりはじめた



その欲が、徐々にノイズとなり

老女の記憶に虚構を作り上げることとなった



この家にたどりつき、

ようやく老女は虚構で消し去ろうとした現実を取り戻す


それは虚構ではない、確かなひかり

 

そうしてようやく、彼女は本当の自分の名前を取り戻したのだった




 

 


 



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