「君に言えなかったこと」
こざわたまこ
コレの続きです

「待ち合わせを君と」
小野寺は大学時代の恋人、しま子と偶然再会した
しま子は、大声を出すことができず
いつも控えめで、まわりに気を使い
まわりから都合よく厄介事を押し付けられたり
自分から貧乏クジを引くような女だった
小野寺はそんなしま子をいじらしく思い、結婚も考えていたが
結局、彼女を捨てた

しま子は優しくて心が広いかのようだけど
実はとっても頑なで、ある意味傲慢なような気もした
私はまわりとは違う。
自分から主張しないし、誰になにを奪われても文句は言わない
だから、なにも言わなくても分かってくれるよね
というような
人間関係において、
人は相手の言葉や反応から相手の気持ちを察し
お互い摩擦がないように、パワーバランスが極端に偏らないよう
無意識に行動している
だけどたまに、
内心の不満や要望を一切表に出さないタイプの人間もいて
(しま子タイプ)
そういう人にだって感情はあってあたりまえなのに
それが自分に向かって来ることはないという安心感からか
相手の気持ちに対する配慮を怠り
一方的にぞんざいな扱いをされる人間関係がある
はじめから相手を軽視するつもりなどなかったのに
いつしか楽な方に流されてしまう、愚かな人間関係の不幸である
しま子は、不満や要望を一切口にしないが
当然そういうものが無いわけではなく
むしろ我の強い、察してちゃんのタイプじゃないかと思えた
無言でなにかこちらに多大なものを求めてるようですらある
そこに気付いてしまうと恐ろしくなる
小野寺はクソなんだけど、でも多分悪人ってわけでもなく
しま子の心の深いところにある要求を知って、それを無視できず恐ろしくなって逃げたのだと思う
再会したふたり
小野寺は、悪人ではないものの弱い人間であることの裁きを受けていて
しま子は、本当に大事なものは、自分が声をあげて守らなければいけないということを学んでいた