わたしがすべてやりました
南綾子


コレの続きです下差し


「ホタルの群れは魔法みたいに」



裕福な家に生まれ、容姿に恵まれて育ち
安泰な結婚をし、子供に恵まれた主人公


すべてが順風満帆な人生だったはずが
ある一人の男との出会いですべてひっくり返る



転落のきっかけはあくまでもその男だったが


転落の「種子」はもともと主人公に備わっていたように思う。

発光するほど美しかった少女の時代から。



やがて芽吹いた「種子」の強大な魔力が本人を飲み込む


そして、残酷にも主人公から若さや美しさが去った後も
自分の中の「種子」の欲望を満たすために彷徨うしかない


そうやって、美しかった女が「ばけもの」になる直前
ふと、ホタルの群れとともに思い出す子供とのエピソードは印象的だ


本当は、宝物はずっと前にすでに手にしていたのかもしれない
気づくのは遅すぎたけど


主人公は本当に子供を愛していなかったのだろうか

ここまで、子供の存在を無視して「転落」することはなくても
人公のように、子供に対して引いた気持ちでいる人は意外といるのではないだろうか

決して、それが悪いことだとは思わない
逆に、すこしの気持ちの隙間があった方が育児はうまくいくこともあると思う
子供とはいえ、別の人間なのだから


子供を持って、あれこれ世話をして育てる
前触れもなく、子供の小さい頃のことを思い出す
これは「そうしろと言われたから」だけでできることではない
それこそ、「可愛いとか、愛しい」だけでできることではない



主人公が「種子」に侵されていない残りわずかの「人間」の部分は、
確かに子供たちを愛していたように思う