おまじない
西加奈子

「マタニティ」
素敵な彼を射止めて幸せ
と思ったら、予想外の妊娠が分かった主人公
妊娠?
出産?
母親?
結婚?
考えてもなかったことばかり
そして、それらのもつ
「正しいイメージ」「王道のイメージ」に、
今更ながら打ちのめされる主人公
その呪縛を解くのは意外な人物の意外な言葉だった
とりあえず言えるのは
インターネットの世界に正解を求めてはいけない
インターネットは便利だけど
あたかも「正論」として
いろんな人がいろんなことを述べている。顔も見えない人たちが。
偏りすぎた「正論」にはさすがにおかしいとすぐ気づいても
「正論」すぎる「正論」の罠には気づけない
書き込む人がどれくらい「正論」を生きてるのかもわからないのに
書き込みだけ見たら、あたかもそれが常識であるような
当てはまらない人は外道であるかのような。
そんな「正論」が、あちこちのベクトルを向いて無数に存在するから
いちいち「正論」を真に受けようとしたら、
どっちを向いても結局矛盾が生じる
私は
母親だけど、一人になりたいって思うことよくあるし
母親だけど、だれかを憎んだり妬んだり
「おまえ消えちまえ」なんて心の中で毒づくこともよくあるよ
下衆。まったく下衆な母親である
だけど生きていくしかない
どこで見てるかも知らない顔も知らない誰かに良く思われるためじゃなく
とりあえず生きるしかない
なるべく正しく、なるべく良くありたいと
非常識かもしれない頭で考えながら。