イスカンダルとオモチャのねずみ
第二夜
✳これは超有名な児童文学作品から着想を得た完全オリジナルストーリーです


夜、イスカンダルはこっそりバラ園にいた
青いバラを探して、魔法使いのヤモリに渡すためだ
ヤモリの魔法で、ビリーをオモチャに戻そう。
それがお互いのためだろう。
さきほど、そう決心したのだった。
「わっ!!」
ふと振り返ったイスカンダルは驚いて飛び上がった
ビリーが両手に青いバラを一本ずつ持ってニコニコしていたからだ
え?こいつも青いバラ探してたの?
やっぱりオモチャの体に戻りたかったのか…?
でもなんで二本…?
「イスカンダル、一緒にオモチャねずみになろうよ!」ビリーは満面の笑みで言った
「え、えーーと…」イスカンダルはたじろいだ
「冗談だよ」ビリーは舌を出した
~一ヶ月後~
ビリーはオモチャのねずみに戻った。
イスカンダルはオモチャにはならなかった。
だけど、ふたりはまだ一緒にいる。
イスカンダルが家の台所で食事をするときは、ビリーは見張りをする。
人間がきたらビリーがカタカタとネジ式で歩きだし
人間の目を引き付け、その隙にイスカンダルは逃げる
もちろん、ネジを巻いておくのはイスカンダルの仕事だ
その家の子供がオモチャのビリーに飽きたら
イスカンダルはオモチャの手押し車にビリーを乗せて、べつの家に引っ越す
あたらしい家の玄関で、イスカンダルは飛び上がってチャイムを押して身を隠す
家の人が出てきたら、ビリーがカタカタとかわいらしく動く
美しいエメラルドの瞳を見たら
人間は誰しも心を奪われてビリーを手に取らずにはいられない。
その隙にイスカンダルも家に入れるというわけだ。
ちなみに、バラは二本あったから
もう一つの願い事は使わずにとっておいてある。
「だってイスカンダルは生きているから、いつか死んでしまうだろ。
そしたら魔法使いのヤモリに頼んで、僕が生き返らせてあげるから」
ビリーはウインクした。
はたして、もしそうなったとき
イスカンダルは生きたねずみとして生き返るのか
はたまた、オモチャのねずみとして生まれ変わるのか
それは親友のビリーにお任せするしかないだろう
と、イスカンダルは腹をくくっている。
~了~