✳これは、超有名な児童文学作品から着想を得た
完全オリジナルストーリーです

イスカンダルとオモチャのねずみ
イスカンダル:人間の家に住み着くねずみ。
オモチャのねずみ・ビリー:元々はオモチャだったが、生きたねずみに転生
魔法使いのヤモリ:青いバラを探して持っていくと願いを叶えてくれる
「もういやだ!」ビリーはうんざりしたように鼻先を振り上げた
ふたりは、ごみの中からビスケットを見つけ、二日ぶりの食事中だった
「やっと満腹になれるじゃないか」イスカンダルはうきうきと言った
「ごみじゃないか」ビリーは吐き捨てた
「それに、お腹がすくっていうのは本当に嫌な気持ちなんだよ」
なるほど、とイスカンダルは思う
満腹のよろこびよりも、空腹のつらさが嫌なのか
ビリーは最近まで、オモチャのねずみだった。
空腹がどんなものか、知らなかったのだろうな
「それにこの、毛だらけの体」ビリーはさらに憂鬱そうに言う
「むかしの僕は、ピカピカしていたよ」
オモチャだった頃のビリーは、金属でできていて、背中のネジで動いていた
瞳にはエメラルドが埋まっていた
やれやれ
イスカンダルはそっとため息をついた
彼は、全力で駆けたとき銀色の毛がなびくのが気に入っていた
一度はオモチャになりたいと思ったイスカンダルだが、やはり生きたねずみでいたいと思っていた
だいたい、ビリーはいつまでオモチャ気分でいるんだ
満腹の素敵さがわからないし、ごみを漁るのも嫌がる
朝起きても「ネジ巻いてくれなきゃ動けない」とか言ってダラダラしている
もうネジ式じゃないだろ
人間に見つかりそうになっても、逃げるどころかシナを作ろうとする
ビリーに気を取られてイスカンダルも一緒に人間に捕まってしまうのも時間の問題だ
イスカンダルはハッとした。
続く。