ばにらさま
山本文緒

20×20
「主婦」であり「妻」であり「母」であり「作家」である女性
テレビ出演や、仕事場としてリゾートマンション購入など作家らしい華やかさの一方
20×20の原稿用紙のマス目を埋める生業に苦悩を感じたり
リゾートマンションの人間関係にビクビクしたりする
すべて重なるというわけではないが、
主人公が作家であり妻である女性ということで
作者の半分エッセー的な短編なのかなぁ
と気軽に読んでいたのですが

結末で急にドーンと
谷底に突き落とされた





こ、この思考を抱えたまま作家の仕事をするのは辛いだろうな



ネタバレにならない程度に書くと
日常生活で得た経験や感情を、どこまで作品のネタにしていいものか…?という苦悩
主人公は自身の薄情さを責めます
作家は皆、こんな苦悩を抱えているの…?
私の勝手な想像ですけど
すごく感動したことや悲しい出来事に
心を震わせるのと同時進行で
「これはネタにしよう」と文章構成を考えている作家もいると思うんですけどね~
少し脱力したトーンで日常を描いていただけに
ラストの4行の威力よ

短い文の集まりで鋭く、的確に、シビアに自分を問い詰める
だけども、この主人公も
作者も
苦悩と迷いを抱えつつも書きつづけるんだろうなと思った

感じたことを文章で表現したいというのは、
欲望を超えて、もはや使命のようなものなのではないだろうか
それでお金をもらう事に葛藤があったとしても…
選ばれし、神からの使命を受けた人