ばにらさま
山本文緒

「バヨリン心中」
死が近い祖母
枕元にはヴァイオリン
祖母から聞かされる、若い頃の
「ヴァイオリン心中」のエピソード
「祖母」の思い出話には東日本大震災が出てきます
すこーしネタバレすると、これは現在よりはるかに未来のお話で、
祖母の回想は現在より少し前の時代(震災の2011年)ということになります。
あの日あの時期、この日本住んでいた人は
直接的に大きな被害を受けなかったとしても
みんな誰しも、なにが正解かわからず考えこんだように思う
安全とは?命とは?大切なものとは?それを守るには?
この短編には、だれも悪人はいない。
だれも愚かな者はいない。
でも、なにが正解かはそれぞれが違い
それぞれが正解を求めて行動した結果
それぞれが後悔を背負って生きている。
私も、祖母の回想部分を読んでも
なにが正解かはわからなかった
だけど、
「アダム」に突進した「遠子」
「このクニはキケンだ」と言われたときに怒鳴り返した言葉
なんだかよくわからないが力が湧くような気がした。
そして、この物語は2013年発表の作品なのですが
前述したようにだいぶ先の未来のお話です(2065年)
未来の描写に、作者はまるで未来が見えていたのかな?とゾクッとなる箇所がありまして



人間を客観視して物語を作る仕事というのは
おのずから冷静にこの先が見えてしまったりするものなのかなぁと思った

とにかく、短編とは思えないような時の流れの凝縮
こじつけでも無理矢理でもなく説明臭くもないのに
それぞれの人物の心情が細やかに伝わってきて
なおかつ読みやすく、ユーモアも感じられる文章で
超エンターテイメントでした
