そこへ行くな
井上荒野

病院
病室にいる中学生の男女
少年は、母親が重い病気で入院中のため見舞いに
少女は、イジメにあって骨折し入院中
二人はクラスメートだった
クラスでは、少女を遠巻きにしていた少年
少女がイジメられていることも知っていた
少女が入院して
少年の心に渦巻く薄緑や赤や灰色の混じりあう濁った想い
死の淵にいる少年の母親
少年が唯一ほっとできるのは、なぜだか少女の病室だけだった
少女の怪我が治る
少年の母親は亡くなった
また、地獄のような教室の時間が再開する
少年が思いついたことは…
命はいつか終わる
それだけは誰にもコントロールできないことだ
誰かが生きてそこにいることを、迫害する権利は誰にもない
いま、命があるなら
自分のそれを守りたいと強く思ってほしい
そして、命と魂を守るための行動をとってほしい
残りの人生はなるべく魂の声に従って時間を使いたいと思う
では、この話の「そこへ行くな」はどこのことか
これはもう簡単
学校
そして
下衆な奴らのいるところ
わざわざ下衆の餌食になって生活する必要はない