山本文緒
無人島のふたりー120日以上生きなくちゃ日記ー
2021年に逝去した作家、山本文緒の最期の日記。
訃報を知ったとき、本当にショックだった。
私は高校生くらいからいくつも著作を読み、大好きな作家さんだったから
闘病記でもあるけど、夫との日々の生活も等しく描かれていて
過去のエッセイや小説と同じように、
冷静で客観的な視点や、思わずクスッと笑えるところがたくさんある。
かと思うと
「涙が止まらなくなった」「だーっと泣いてしまった」という
ストレートな心情が伝わる箇所がいくつもあった
無人島に流されたもう一人、夫の
庭に植えた木やグラタンのエピソード
自分のことだけでも精一杯の状況で、相手の気持ちをそっと掬い上げるところに
優しさと心の深さを感じた
そしてこの日記は、山本先生が旅立つ9日前まで記されている。
最後の日記を読んで私はまたある確信を少し強めた
「さざなみのよる」のところでも書いたんですが、
やっぱり死ぬのって旅に出るのと本当に似てるんじゃないだろうか



今までに体験したことのない不思議な状態
だけれど、まわりの喧騒はよそに内面は静かであるような
不適切な例えだったら申し訳ありませんが、私はこの最後の日記を読んで
竜巻でオズの世界にワープしたドロシーや
SFでよくある、たくさんの光に吸い込まれて宇宙船に乗り込むやつや
今まで出会った人々がパレードのように集まる中、最期は大きな魚になって川を泳ぎ出す
映画「ビッグフィッシュ」のラスト
そういうものを思い浮かべた
なんだかよくわからない状態でなんだか新しいどこかに旅立つ。
強い力で引っ張られているようだけど、心は静か
私もいつかそういうふうに旅立つんだろうか
私がどういう形で最期を迎えるかわからないけど
もし最期に思いを馳せる時間があるならば、
「さざなみのよる」と一緒にこの本もそばに置きたいと思っている。