かわら版 No.1125 『森友の余波』
激務の内閣総理大臣をもっとも身近な手足として、時には頭脳として支えるのが複数名の「総理大臣秘書官」です。そのうち1人は政務秘書官。通常は気心が知れたベテラン議員秘書が就任します。その他の事務担当秘書官は、各省の課長クラスが出向して就きます。
野田内閣では、政務担当と財務、外務、経産、防衛、警察、厚労の各省出身者からなる7名体制でした。各省のエース級が揃った精鋭軍団でした。
「森友学園」を巡る問題で国会審議の矢面に立っている太田充・財務省理財局長も、私を支えた総理秘書官でした。その太田局長に対して、19日の参院予算委員会においてトンデモナイ質問が浴びせられました。
「民主党政権時代の野田総理の秘書官も務めており、増税派だからアベノミクスをつぶすために、安倍政権をおとしめるために意図的に変な答弁をしているのか」と。
質問者は自民党の和田政宗参院議員。名前は武将みたいに立派です。でも、質問内容は下衆(げす)の勘繰りレベルです。さすがに与党内からも批判の声があがり、この発言は議事録から削除されることになりました。
公文書改ざん問題を「佐川事件」と称した自民党議員もいました。これらの発言は、特定の個人や役所に責任を押しつけ、安倍政権を擁護しようという意図からでしょう。果たして、一部の不心得者が起こした問題なのか、政権全体の問題なのか。27日の佐川前国税庁長官の証人喚問は真相解明のための一里塚に過ぎません。総理夫人も含めた関係者のさらなる国会招致が必要です。
森友学園への国有地払い下げ問題の余波は、日本の経済外交にも及んでいます。19、20日とアルゼンチンで開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席予定だった麻生太郎財務大臣が、公文書改ざんへの対応のため欠席することになりました。この国益を損ねる事態について、私は20日の衆院財務金融委員会で取り上げました。
G20に参加している国・地域の国内総生産(GDP)合計は、世界全体の約9割です。貿易総額も約8割を占めます。グローバル経済の方向性を議論する場としては、最も重要な国際会議です。特に今回は、仮想通貨の国際的規制や保護主義の拡大回避など、日本が議論を主導すべき議題がありました。
こうした問題意識を背景として私は、「自由貿易よりもラストベルト(トランプ大統領を支持する中西部地域)を優先する米国は、鉄鋼・アルミニウムの関税引き上げを急に決めた。今やEU等との貿易戦争の前夜だ。この局面での大臣欠席のマイナスは極めて大きい」と指摘しました。
麻生大臣は「残念ながら今回は出席できなかったが、日本として発言をしていくべきだ。副大臣にその役をやってもらう」と、述べるにとどまりました。来年は日本がG20の議長国であるという自覚も、欠席するにいたった深い反省も足りない答弁でした。