あるテレビ番組でちょっと変わった家を紹介していました。そのうちの一つは、スキップフロアをあちこちに使った家。
スキップフロアとは、1つの階に複数の高さのフロアが設けられた間取りのことですね。ちょっとした段差を設けて変化をつけたおうち。半地下や中2階、中3階など多層の間取りをつくれるのも魅力的。
ですが、テレビで紹介されたおうちは、「スキップフロアにもほどがある家」でした。
急こう配の階段を上ったすぐ脇にソファのあるリビングがあり、階段との間には何の仕切りもないように見えます。なぜか足がこんがらがって、おっとっととバランスを崩したまま体勢を持ち直せず、そのまま階段から落下する自分が目に浮かびます。それか、あるはずのない手すりにもたれてコーヒーを飲もうと余裕かまして落下する亡き夫とか。
階段がすぐそこにあり、手すりや仕切りがないと思うと見ているだけなのにゾクゾクして落ち着きません。
さらにキッチンは数段の階段の上、書庫ははしごを上ったところにある幅数十センチのスペース、極めつけは、解放感を重視したというお風呂。宙に浮いたみたいな不思議な場所にあり、何をどう上っていけばいいのか、家の中のツリーハウス風呂状態です。
酔っぱらったお父さんや足を滑らせたお母さんが全裸で上から落ちてくるなんてことないのかな。余計なお世話だけど、気になって仕方ありません。その前に私なら、あのお風呂まで怖くてたどり着けません。
スキップフロアの達人的な設計士さんが建てた注文住宅なんだとか(感じのいい人でした)。「老い」を数に入れなければ、ここまで大胆かつ危険かつアスレチックな家が建てられるのかと感嘆しました。
窓がぐるりにあり、室内に段差があるからこそ、どこに座るかで見える景色が違う。緑が見える場所もあれば、空しか見えない場所もある。それは、本当に素敵。
だが。
その家の奥さんは、「すべて気に入っているけど、ロボット掃除機が落ちないようにずっと見張っておく必要がある」とおっしゃっているんだとか。それ、十分にめんどくさいと思うんだけどな。きっと料理を運ぶのも大変だと思う。熱々の汁ものを持って数段とはいえ、段差を下りるとかビミョーなストレスじゃないかな。
建築士さんには、「今はいいですが、50代ぐらいからこの段差はきつくなると思いますので、全面リフォームを前提にしましょう」とちゃんと言っておいてほしい。すごいお金持ちなら期間限定の素敵なおうちとして楽しめるだろうけど、年をとったら住めない。住めたとしても、あのお風呂にはたどり着けない。書庫は行かずの書庫になる。
建築士さんも若かったけれど、注文主の家族も、もしかしたらその親御さんもまだ若いのかもしれません。身近にお年寄りがいないのか。
「老い」を先取りしすぎて手すりだらけのバリアフリーにする必要はないけど、「老い」はあるときに急に始まるものでなく、じわじわと30代から40代、40代から50代、50代から60代と緩やかに進行していく自然過程なので、「今の自分」だけでなく、「明日の自分の暮らしやすさ」を想像に入れるのは重要なリスク回避能力だと思いました。
どんなに若くても、明日の自分は今日より老いているんだもん。
わたしも、明日の自分の暮らしやすさを想像して工夫しようと思った。
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渓谷散策路を歩いて思った。やっぱり、靴だ。靴が「一寸先」を闇から救う。
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■sakae0325さん
お母様すごいです。憧れです。うちの母は、80代には認知症でグループホームにいました。もっと長く元気で過ごせればよかったなあと思います。