夕ごはんの食器を洗いながら思ったのですが、どうやら、わたしの「危機対応」の時期は終わったようです。

 

 

わたしの危機対応期は、2018年9月1日から2022年11月6日まで。夫が倒れて植物状態になった日から、夫の墓を決めた日までです。

 

 

倒れてからの約2年間、病気でいえば「急性期」にあたることは、拙著「夫が倒れた!献身プレイが始まった!」に書いています。

 

 

  

 

 

 

いま、見たらアマゾンのほうに100を超えるレビューが付いていました。★ひとつの評価が1割弱あります。「自分のことしか考えてないじゃないか」という批判の声だと受け止めています。受け止めますが、自分の行動を後悔していません。

 

 

危機対応期は、「自分に正直」であることがもっとも大切です。

 

 

自分に正直というのは、そのときの感情のままに行動する、ということではありません。そんな負け戦をしていたら、危機的状況に押しつぶされるだけです。

 

 

そうではなく、あらゆることが押し寄せる混乱した状況のなかで決断を強いられるたびに、そこでイエスと言う前に、いや、仕方なくイエスと言いながらでも、「自分はいま、何を感じているのか」「それをしたいのか」「本当にできるのか」「どこかで無理をしていないか」「あとで後悔しないか」とつねに自分に問い、会話をし、自分の思いを自分が汲み取ってやることをあきらめないことです。

 

 

そして、「あ、違う」と思ったら、遅すぎることはありません。必ず間に合う。必ず間に合うから、相手になにを思われようとも、勇気を出して前言撤回することです。

 

 

バタバタと追いかけて行って「すみません!いろいろ考えたんですけど…」とモゴモゴ言いながら平謝りすればいい。カッコ悪くていいんです。伝えるべきことだけ、伝わればいい。「なんだ、そんな奴か」と思われてOK。相手はすぐに忘れます。幻滅、上等。

 

 

そんなとき、わたしは、いつもブティックの試着室を想像するようにしています。

 

 

何着も服を着てみて長時間つき合わせた店員さんに「これ、買います」と言って帰り道、自己嫌悪に陥り深く後悔するのか。そうならないよう、この瞬間にちょっとの勇気を出して「もう少し考えます」と断るのか。もしくは、買ってしまったけれど、「すみません。返品させてください。本当にごめんなさい」ともう一度ブティックに戻って平謝りするのか。

 

 

判断の基準にすべきは、「試着室の自分」ではなく、「帰り道の自分」です。

 

 

帰り道の自分は、本当のことを知っています。ほかの誰よりも、いまの自分よりも。何が欲しいのか、何でユーウツになるのか、何をしたくないのか。いつだって大事にすべきは、「帰り道の自分」なのです。だってそれは、今夜も明日も、ずっと付き合う自分なのだから。

 

 

わたしの場合は、「夫が倒れて植物状態になる」という危機でしたが、おそらくあらゆる危機にマニュアル的なものが存在するでしょう。本やネットで検索できるものもあるでしょうし、「そうするものと世間が考えている」という常識も強固なマニュアルのひとつです。

 

 

マニュアルは、参考にはなっても、あてにはなりません。ほんとに。ときには、檻になり、足枷になります。

 

 

自分に正直であろうとして自問自答し、自分で結論を出す努力をつづけることだけが「あてになる」。この4年以上を振り返ってしみじみ思います。断言してもいい。

 

 

この危機管理能力は、一生ものです。わたしは、これからも生かしていきたい。

 

 

人生、いつだって何があるかわかりません。突然に破られるのが平穏であり、日常です。

 

 

夫が倒れたとき、わたしは、スーとのほほんと散歩をしていたんですから。

 

 

これからも、日常が平穏でなくなったとき、自分の心がどう動き、どんな叫びをあげ、どんなことに抗いたいと思うのか。優先順位の一番上には何があるのか。じっくりと自問し、自分の声に耳を傾け、自分の思いを汲み取ってやりたい。

 

 

その意味で、わたしは、わたしを頼りにしています。

 

 

正直であるために「相手に穏やかに意見を伝える技術」も必要です。これも数々の失敗を重ねて試行錯誤のなかで少しずつ身につけてきました。もちろん、いまも、完璧ではないけど無用な衝突は避けられるぐらいにはなったと思います。そのへんのことも少しずつ書いていきますね。

 

 

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