夫が倒れて3年半が過ぎました。その間の約1年は娘と、残りの2年半は一人と犬一匹で暮らしたことになります。

 

 

「よくやってるね。自分が一人になったら、どうなるだろうと不安になる」と言われます。わたしも、夫が元気なころは不安だったので、その気持ち、すごくよくわかります。

 

 

でも、今のところ、寂しさを感じたことはありません。ない、というと嘘になるけど、寂しさに覆われたことはありません。闘病中とはいえ、夫がまだ存命なことも支えになっていると思います。でも、それ以外にも理由がありそうです。

 

 

ひとつは、寂しさを感じやすい早朝と夕方に犬と散歩していること。目覚めてスマホに手を伸ばすと同時に、その気配を察して犬が起こしに来るので「起きたくない」と考える間もなくベッドを出て1時間ほど歩きます。途中、顔見知りの老夫婦に挨拶したり、友だちに会って一緒に歩いたりすることもありますが、誰にも会わなくても太陽の光を浴びて歩くと気持ちが上向きます。たくさん歩いて帰宅すると「よし、今日もよくやった」という達成感も覚えます。

 

 

 

 

それから朝ごはんを食べるのですが、その支度をするたびに、「私ってこういうことマメにやるよなあ」と毎回思います。我ながら偉い!という感じじゃなくて、「よくやるな。ほんとに食べることが好きなんだな」とちょっと呆れる感じ。

 

 

というのも、その日によって「ごはん」か「パン」かを決めておいて、作り置きの入ったタッパーを冷蔵庫から出して並べて皿に盛って電子レンジで温め、納豆も小鉢に移したりなんかして、ランチョンマットも敷いたりして、すごくちゃんと準備するのです。フルーツを切ってヨーグルトも出したりして。

 

 

このときには、もう大体、昼と夜に何を食べるかもほとんど決めています。

 

 

今日は、午前中、夫の病院に行ったので帰宅後、解凍しておいたピザ生地とバジルソース、ベーコン、トマトでピザを作って食べました。冷凍ピザ生地は、自分で伸ばすやつです。この支度をするときも、「ほんと、こういうことは熱心にやるよなあ。食い意地がはってるな。段取りもいい」と呆れる気持ちと自画自賛の混じる思いで面白がりました。そしてちゃんと美味しかった!

 

 

夜は、これも作っておいたコロッケをレンジで温めた後、さらにトースターで温め、千切りキャベツとトマトを添え、作り置きの白菜とツナの煮物といっしょに食べました。ごはんは食べていません。

 

 

 

こんな感じで「何を食べるか。その段取りをどうするか」を考えることに脳のかなりの部分が占められているので、仕事が暇なときも、天気が悪いときも、イヤなことがあったときも、寂しさという「虚ろな気分」に浸っている時間がないのです。だって、すぐに次のごはんが待っているから!

 

 

園芸下手ですが、初心者レベルで育てられるものだけを育てているのも気分の維持に役立っています。南側のベランダには、10月に植えておいたチューリップとビオラが咲いていて、もうすぐ植えっぱなしの白モッコウバラが咲きます。東側には、これも植えっぱなしのクリスマスローズが咲き、北側は、娘が帰ってきたときに気持ちがいいように昨年からアジサイとクリスマスローズ、レモンユーカリを育てています。アジサイの葉が青々として柔らかく綺麗です。見る度に胸がスーッとします。

 

 

 

 

 

 

こうやって書くと「ちゃんと暮らしているから、一人に強い」という印象を与えそうですが、わたしの場合は、それとはちょっと違います。そこそこ「ちゃんと暮らしている」ほうだと思いますが、それは結果であって目的じゃない。

 

 

「少し先のごはん」「少し先に目にする風景」「少し先の気分」の質を極端に下げないようにできる範囲で手立てをしておき、心理的に深い谷底に落ちないようにしているんだと思います。若いときに何度も荒れた部屋のなかで激しく落ち込んできたので、もう、そうなりたくないのです。そして、その手立てを、より一層レベルアップしようとすると負荷がかかるから、それもやりません。もっとおいしい料理、もっと美しいガーデニングなんてめざさない。今できる範囲で満足。自分が無理せずに手に入るおいしさや美しさで十分です。

 

 

わたしの個性は、いつだって「ありあわせ」なところにあるのです。この自分の成り立ちも「ありあわせ」だし。

 

 

長年、ブログを続けてきたせいで、日々のことを「書き言葉で考えながら体験する」習慣が身についているのも大きいかもしれません。耐えられない孤独感や寂しさは、おそらく「胸に空いた穴のザワザワ」なのだと思うのです。そのザワザワを鎮めようとせず、言葉に変えようとしながら暮らしていると、いつの間にか、御しやすいものに変わっています。(だから公開のカタチで書き続けること、オススメします。心の危機管理に役立ちますよ)

 

 

それでも残る孤独感や喪失感、哀惜などは、ザワザワとさせたまま漠然と流すことなんてしないで、自分だけの感覚で味わい、自分なりの言葉を与えていきたい。

 

 

そういうわけで、明日もごはんを作って食べます。朝食は、ごはんの予定です。

 

 

  よければ、こちらもお読みください。

 

★ウェブマガジン「どうする?Over40」→手助けすること、手助けされることに慣れる。

 

★コメントありがとうございます。オフィシャルブログの仕様で、わたしから直接お返事が書けません。こちらのフォームからメールをくださるか、ツイッターで話しかけてください。(ツイッターの返信が一番早いです)

 

★昨年まで更新していたブログはこちらです→どうする?年齢とおしゃれ。それらすべての生き方

 

★雑談するだけのポッドキャスト番組「That’s Dance」は金曜夜の配信です。