この数年、仕事でいくつかの高級老人ホームを訪ねました。

 

 

何も知らないときこそ、「知ってるふうの固定観念」の世界にどっしりと住んでいます。

 

 

高級老人ホームにしてもそう。「高級なんでしょ」という漠然とした認識のもと、ドラマやニュースなどで見た断片的なイメージをつなぎ合わせて「知っている」と思って、余裕をかましていました。

 

 

ところが、実際に訪ねてみると度肝を抜かれるほどゴージャスなところもあれば、それほどでもないところがあります。雰囲気がまったく異なるのです。

 

 

そして、実際のさまざまな「違い」が粒だって見えてきます。たとえば、エレベーター脇のイベント告知表、ロビーに置かれている新聞や書籍の種類や数など。そこから、「ははあ。なるほど、ここはこういう方針で運営されているんだな」とわかりはじめる。

 

 

ひとつしか知らないときは、「そういうものか」となって、つい他人に「高級老人ホームなんてこんなものよ」と得意げに断言してしまいそうになります。ひとつしか知らんのに。というかひとつしか知らんからこそ、余計にそうなります。断言したいし、比較材料がないから簡単に断言できるのです。おそろしいことに。

 

 

ふたつ見ると「比較ができる」ようになるので「違いが見えて」きます。ここで初めて「高級老人ホームといえど、こんなに違うのか!」となるのです。そして、この二つでこんなに違うんだから、きっともっといろいろあるんだろう、となる。いきなり謙虚になるのです。高級老人ホームに対して。

 

 

たとえば、昼食の時間が過ぎた午後のレストランの賑わい。あるところは、閑散として暗く無人だったけれど、あるところは、スタッフに車椅子を押されて次々に利用者がやってきて、お茶を飲んだり、グループでおしゃべりをしている。あれ?そういえば、ここは、介護士さんやスタッフの数が多いぞ。どことなく、みんな明るいぞ…なんてことが見えてくる。

 

 

それぞれの施設が何を重視しているのか。どんな人の心をとらえたいと思っているのか。そして、自分なら(そんなことは不可能だけど)どこに入りたいのかと考えられるようになる。「オススメするなら、ここだな」なんて考えも浮かぶ。

 

 

とにもかくにも「もう一つ、知る」ことが大事です。たくさんが無理でも、せめて「もう一つ」。

 

 

多様性なんて言葉を使わずとも、とにかく「もう一つ」知る。

 

 

「無知」が「断言」を生むのです。根拠のない自信に裏付けされた強い断言口調。偏見といってもいい。それを「高級老人ホーム」に教えられましたよ。なんでも、知らん世界には「偏見」が紛れ込むの!!ほんとに!

 

 

格差と分断の時代といわれ、SNSにもさまざまな「断言」があふれていますけど、「もう一つぐらい、知ってから言ってる?」と常に自分に問うていきたいです。

 

 

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