春にいつも浪人生に話すのですが、高校を卒業したら「人生すべて自己責任」です。上手くいけば全てあなたのおかげだし、失敗すれば全てあなたのせいです。もう一度チャレンジするかどうか、自分でよく考えて決めて下さい。そしてたいへんな一年になるはずですから覚悟を決めて下さい。


私が、これからの人生は自己責任である、と言うのは「自分で自分の未来を決められること」そして「もう誰もあなたに強制出来ないこと」がその理由です。

大抵の場合、親や先生は子供に向かってその子のためになると思って正しいことを言います。しかし言われた方はそれが正しいことだと頭ではわかっていても、もう無条件に従ったりはしません。自分で考え、自分の好きなように行動します。さらに予備校には強制力がありません。

勉強しなくても、授業をサボっても怒ってくれる大人はいませんし、たとえいたとしても幼い頃のように言いなりになったりはしないでしょう。あなたをこの一年間守るのはあなたの崇高な向上心だけです。

怠惰や快楽の誘惑に負けて努力を怠ってしまったらもう誰もあなたを助けてあげることはできません。若い人の一年は年配の人の10年以上の価値があると思います。もう一回チャレンジするのではあれば悔いのない、充実した一年にして下さい。


新浪人生の場合は何らかの形で予備校に通った方がいいと思います。全科目の授業のある本科生、自分で好きな授業だけを幾つかとって組み合わせるメイト生の2つのタイプがあります。

本科生は分野、項目に漏れがありませんが、その分授業を受けている時間が長くなり、予習、復習の時間まで考えると確かにハードスケジュールになります。

メイト生はその分時間に余裕が生まれますが、別に網羅性のある参考書等をやった方がいいかもしれません。そして本科生以上に自制する精神力が必要になります。

それから本科生になる場合、成績優秀な方はかなりの額が免除されます。是非予備校の説明会に参加して職員の方に相談してみてください。


どちらにせよ予備校で効果をあげる上で重要な事は予習です。事前にどれだけその問題に立ち向かい考えたかで授業の効果は決まります。科目によって違うのかもしれませんが少なくとも数学に関しては事前に何もしないで授業に出ても全くの時間の無駄です。ただ言われるまま黒板を写してうちに帰って暗記する。どんどん数学が嫌いになっていくだけだと思います。

だから一番重要なのは自分のレベルに合った教材を使うクラスに入ることです。半分くらいは予習で答えらしきものが出る、そんな教材を選んで下さい。大は小を兼ねると言いますが、難は易を兼ねません。全く予習出来ないテキストの授業を聞いても時間の無駄です。

東大に行きたいから東大クラス、医学部に行きたいから医学部クラスというように皆考えます。一見正しいように思えます。

ただそれはそれ相応の学力のある場合であって、数学三をやってないとかサインが何だかわからない生徒がそんなクラスに入っても意味はありません。志望校で決めるのではなく、必ずテキストを見て自分の学力にあった、授業に参加出来る教材を使うクラスに入って下さい。

しかしそれでもやはり自分の志望校の冠の付いたクラスに入りたいのが人情です。

そうであるならば今のこの時期必死になって勉強したらいかがでしよう。自分のレベルに合った勉強は授業のないこの時期しかありません。落ちたその日も勉強して下さい。授業が始まったらもうその授業にあわせて行くしかない。教科書レベルの勉強は今しか出来ません。

気分転換、傷付いた心を癒す為にこの時期、旅行に行ったり車の免許を取る人もいます。勿論あなたの自由なのですが、本気で受かりたいと思う人がそんな事に時間を使うでしょうか?

ギリギリ数点で落ちたならいざ知らず、全然ダメだった人に遊んでいる時間などないはずです。

ウサギと亀で言えば、今は自分の事を亀だと思った方がいい。自分をウサギだと誤解している亀はこれからの人生上手く行きません。自分を亀だと思っているウサギが際限なく向上していくのです。人生、自己責任です。今一度、もう一年という言葉の重みを考えてみて下さい。


テキストの話に戻りますが、最初の教材の選び間違いが大きな多浪の要因になります。自分で問題を解く事によってしか状況は好転しない事を理解して下さい。難しすぎるテキストは害悪でしかありません。


私はよく医学部を目指す多浪生に厳しいと思われているのですが、能力は低くとも努力している生徒に怒った事など一度たりともありません。

もう一年やるかどうか迷っている医学部を目指す多浪人に申し上げたい。

いま、sinxの三乗は微分できますか?積分する方法はわかりますか?

もしNOならもうやめて別の道を探して下さい。この一年あなたが最低限の努力すらしてこなかった証拠です。未来永劫医者になろうなどと思ってはいけませんよ。


50、80問題という言葉をよく聞きます。50代の無職の息子が80代の親の年金で暮らしている。

そしてどちらかがどちからを殺害してしまう。毎年のようにニュースで見ます。一昨年には医学部を受け続けている30代の女性が母親を刺し殺した事件がありました。このような事件にならないだけで同じように崩壊している家庭は僕らが思う以上にあると思います。大学受験がその要因の一つになっているケースが少なくないように思います。大学受験をそして浪人することを軽々しく考えてはいくません。

私はよく「ひとりでご飯が食べられるようになればいい」と生徒には言うようにしています。

正直なところそれが本音です。

だから人それぞれですが、悔いのないように限界まで頑張ってあとはなるようになると受け入れたらいいのです。人生の成功の仕方とは人の数だけあって少なくともたった一つではありませんから。


自己責任と言う言葉は他人を切り捨てる悪い意味に使われることが多いです。もちろん、身体に障害があって働けない人や身寄りのない高齢者に向かって自己責任と言う言葉は使ってはいけない。

ただ健常な若い人は今までのことなんてどうでもよくてこれからどんどん行動して好きなように変えていける。

人生を選択できる。だから自己責任なのです。

ひと足早く一流校に入った友人を見て悔しい思いをしている人もいるでしょう。でも妬んだら負けですよ。妬むというのは一生あなたにはかないませんと諦めた時に起きる感情です。次にまた勝てばいいだけの事です。だから若い人が他人を妬むというのはまったくおかしい。これからどうにでも出来るんですから。

そんな悔しさ、劣等感、将来に対する不安、プライド、夢、その全てをエナジーに変えてこの一年頑張りつづけてください。

来春の三月の勝者になって下さい。

                荻野暢也